2021 Fiscal Year Research-status Report
インドにおける児童養護施設出身の若者による「家族」の想像/創造
Project/Area Number |
18K02020
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
針塚 瑞樹 別府大学, 文学部, 准教授 (70628271)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / NGO / 若者 / ネットワーク / コミュニティ / アフターケア / ケアリーバー / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、デリーの児童養護施設「子どもの家」(仮名)の協力を得て、「子どもの家」出身の若者の抱く家族のイメージと、実際にどのような家族形成を行っているのかを明らかにすることを目的としていた。調査は現地において児童養護施設と若者の家庭における観察とインタビューを中心に行う予定であった。2020年に引き続き、2021年においても新型コロナウイルスの感染状況により、インドでの現地調査を実施することができなかった。 フィールドワークを行うことができないなか、限られたインフォーマントの若者やNGO施設職員との間ではあるが、インターネットを介したチャットや通話を行い、コロナ禍において若者たちがどのような状況に置かれたのかについてインタビューを行った。昨年までの研究では、施設出身の若者にとって「子どもの家」を基盤として構築した社会関係が、彼らの生活においてケアする/されるという関係を担っており、施設を中心としたネットワークの存在が、家族・親族に代替する生存基盤としての機能を果たしているという仮説を得ていた。 今年に入ってからはインド人々の生活はコロナ禍前の状況に戻りつつあるが、新型コロナの感染拡大は、「子どもの家」出身の若者の生活にも大きな影響を与えたといえる。彼らの多くが、観光業、エンタテイメントの業界において職を得ていたため、仕事がなくなり経済的な困難を経験した者が少なくなかった。この苦境に対して、「子どもの家」の同窓会や「子どもの家」からの食糧支援などがなされていたという情報を得ている。また、職を失ったり、仕事の契約が切れたりした最も困難な時期の生活は、施設を中心としたネットワークだけでなく、配偶者の家族・親族を頼るなどした者もいた。コロナ禍には多くの人が一度に影響を受けたため、「子どもの家」を中心とした都市におけるネットワークだけで対処することが難しかったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年からインドでの現地調査を実施することができておらず研究の進捗は遅れている。メールやチャット、ネットを介した通話によって、現地のNGOや若者の生活に関する情報を収集しているが、かなり限定的なものとなっている。主要なインフォーマントのなかにも、新型コロナの影響により、生活が一変した者もいるため、連絡を取ることやインタビューを行うことが難しいという状況がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年に入って、インドの新型コロナの感染状況は落ち着いており、困難に直面していたインフォーマントのなかにもコロナ前の状況に近い生活に戻っている者もいる。しかし、コロナによって元の仕事に戻れていない者や、計画していたことの変更を余儀なくされた者もおり、詳しい生活実態と彼・彼女らが現状をどのようにとらえているのかという点は、インタビュー等の調査を行ってみなければ分からない。今年度中に少なくても一度は現地でのフィールドを行い、若者らの生活状況についてインタビュー調査を実施する予定である。 また、たとえ調査に行くことができたとしても、限られた期間となるため、現地の調査協力者を通じてアンケートやインタビューを代替してもらうことによって、データを収集することも考えている。具体的には、インフォーマントのなかで高等教育を受け、フィールドワークを行った経験のある者や、フィールドであるNGOに長期間勤務しているソーシャルワーカーに依頼することを考えている。しかし、この計画も一度現地に赴いて、当事者らと会って打ち合わせをしてからでないと、スムーズに実施することは難しいため、とにかく一度現地調査に行くことを優先したい。
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Causes of Carryover |
本研究では、現地調査のための旅費による費用支出を予定していたが、新型コロナ感染拡大のために、現地調査を延期したために、次年度使用額が生じた。2022年度中に、延期していた現地調査を行い旅費として使用する予定である。
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