2019 Fiscal Year Research-status Report
Screen Media and Social Movements in Modern Japan
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18K02022
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Research Institution | International Institute for Children's Literature,Osaka |
Principal Investigator |
鷲谷 花 一般財団法人大阪国際児童文学振興財団, その他部局等, 特別専門員 (10727100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 安子 一般財団法人大阪国際児童文学振興財団, その他部局等, 総括専門員 (00416257)
紙屋 牧子 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 研究員 (20571087)
岡田 秀則 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 主任研究員 (30300693)
吉原 ゆかり 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70249621)
アン ニ 日本映画大学, 映画学部, 特任教授 (70509140)
鳥羽 耕史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90346586)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 幻灯 / スクリーン文化 / 出版美術 / 社会運動 / プロパガンダ / 児童文化 / 写真 / ドキュメンタリー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も各地で一般向けの上映会を開催した。2019年10月12日に、山形国際ドキュメンタリー映画祭関連自主企画として、山形大学人文社会科学部附属映像文化研究所との共催による二部構成の上映会「幻灯の映した昭和―絵本と炭鉱―」を、山形大学人文社会科学部にて開催した。第一部では「絵本作家の幻灯画」と題して、せなけいこ、いわさきちひろ、かこさとしの作画した1950年代の幻灯を上映し、第二部では「三井三池争議60周年 炭鉱とフィルム/スクリーン」と題して、三井三池争議に際して炭労が製作した幻灯3本と、全日自労製作の映画『ここに生きる』(望月優子監督)を上映した。大型台風の接近中にもかかわらず盛況となり、『山形新聞』及び『Il Manifesto』(イタリア紙)に上映会の状況が紹介された。 引き続き一次資料の収集・整理に取り組んだ結果、昭和戦中の戦時国策宣伝の目的で製作されたセロハン及び紙製の代用フィルムを用いた幻灯及び説明台本、1941年の文部省選定幻灯機「神風一号」の現物資料などを新たに発見、収集することができた。戦中の代用フィルムを用いた幻灯には、たとえば大原冨枝が脚本を担当した作品など、従来存在を知られていなかった貴重な資料が含まれているが、全体に保存状態は良好ではないため、今後専門業者との相談の上で、復元・複製作業を行う予定である。 占領期から昭和40年代頃まで、小西六写真工業株式会社が発売していた幻灯シリーズ「コニグラフ」についての調査を行い、現時点で所在が判明している幻灯フィルム及び説明台本数百点のリストを新たに作成した。リストについては今後当該資料を所蔵するアーカイヴ間で共有する予定である。 以上の成果については、学会誌査読論文及び国際学会等での発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新資料の発見、収集、整理については、散逸が著しく、現状では専門機関による収集も行われていない戦時期の代用フィルム幻灯を10数点発見し、また、日本における幻灯メディア復興のきっかけとなった1941年の文部省選定幻灯機「神風一号」の現物資料を入手するなど、順調に成果をあげることができた。 また、小西六写真工業株式会社が自社製のさくらカラーフィルムを用いて製作・販売していた「コニグラフ」の、現時点で所在を確認しているフィルム及び説明台本の目録作成作業を完了した。「コニグラフ」は、著名な画家、イラストレーター、漫画家、絵本作家、アニメーターらが作画を担当し、昭和戦後の幻灯文化の充実を示すシリーズであるにもかかわらず、小西六の組織を引き継いだ現コニカミノルタも30数点のフィルム及び台本を所蔵するのみで、現状では大多数が散逸しているため、今回の目録作成は、「コニグラフ」の全体像を把握するための貴重な足がかりとなる。 これまでに発見、整理した資料については、複数回の一般向け上映会にて公開してきた。2019年山形国際ドキュメンタリー映画祭関連自主企画として、山形大学人文社会科学部附属映像文化研究所との共催により開催した上映会「幻灯の映した昭和―絵本と炭鉱―」は、著名絵本作家がキャリアの初期に作画した「幻灯画」と、1959-60年の三井三池争議を記録する幻灯及び映画という、従来は見る機会がほとんどなかった作品群を、フィルム現物と幻灯機による上映によって紹介した。 これまでの調査研究成果については、研究代表者鷲谷花の論文「スクリーンの「ニコヨン」たち―失業対策事業日雇労働者の映像文化史」(『映像学』第102号、2019年7月)をはじめ、複数の学会誌論文及び論集の分担執筆によって発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に収集した戦時中のセロハンや紙の代用フィルムを用いた幻灯については、専門業者と相談して適切な方法を確認したうえで、修復・保存のための諸作業を行う。また著作権問題をクリアし、デジタル複製作業と公開準備を進める。 2020年5月現時点での新型コロナウィルス感染症の流行下、アーカイヴ調査の再開の展望については不透明であるが、国内の状況が改善次第、社会運動に関連する幻灯及び映画資料を所蔵していることが判明している国内各アーカイヴでの資料調査に着手する。 今年度は、海外における調査や学会参加などの活動は困難と考えられるが、Web会議システムを用いた国際会議の開催を検討しており、現時点では冷戦期日韓の映像メディアによる米軍基地問題表象に関して、海外の研究者と合同でオンライン研究会の開催に向けた準備を進めている。 今年度までの調査・研究成果については、今年度中に1冊の著作にまとめて刊行することをめざし、現在は各章の原稿を執筆中である。
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Causes of Carryover |
2020年1月以降の中国大陸における新型コロナウィルス感染症の流行により、1-3月の海外での資料調査及び学会参加が不可能となり、国内の出張・発表予定もキャンセルが相次いだため、出張費及び準備に係る諸費用の支出を次年度に持ち越さざるを得なかったため。 今年度はオンライン国際学会を開催するため、設備費や助言・協力・翻訳・通訳に対する謝金として、次年度使用額を支出する予定である。
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Research Products
(8 results)