2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02026
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 会話分析 / 医学的に説明のつかない症状 / 診療場面 / 不満 / 医療社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学的に説明のつかない症状を抱えて生きる患者は、医師に問題を訴えても身体的異常が見つからず、しばしば心理的問題と見なされて不満を抱くことが指摘されている(Glenton 2003; Lillrank 2003; Nettleton 2006; 野嶋 2013, 2015; Werner & Malterud 2003)。本年度は、こうした患者の診療経験を他の患者の経験との連続性の中で理解するため、患者が過去に受診した医師・医療機関に関する不満を述べる手続きを分析した。大学病院総合診療科外来でビデオ録画した63の初診場面をデータベースとして、患者が同じ主訴に関して過去に受診した医師・医療機関に関する不満を表明している17の事例を分析対象とした。その結果、他の医師・医療機関に関する不満は、現在の受診の必要性を示して受診の正当化に資するとともに、患者が理性的な患者であるという自己呈示を損なう危険もある行為であることが明らかとなった。また、原因不明の慢性疼痛を抱えた患者の事例の集中的分析からは、患者が他の医師・医療機関に関する不満を述べることの二面性に志向して、不満を表明する位置や発話形式を慎重に選択し、理性的患者としての自己呈示を維持することで、受診の正当性を高めていることが明らかとなった。この事例分析は、医学的に説明のつかない症状を持つ患者の「病人役割獲得をめざした努力」(Glenton 2003)が診療の相互行為の全域的構造および連鎖的構造に媒介されたものであり、診療のそれぞれの時点で立ち現れる相互行為的課題に敏感な形で不満表明の仕方を慎重にバランス調整することから成り立っていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集はおおむね予定通りのペースで進んでおり、整理済みのデータに予備的分析を施すことで、本年度の目標としていた予備的な分析的知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにデータベースを増やしながら、以下の課題に沿った分析を順次行っていく。①医学的に説明のつかない症状を持つ患者に対して、医師が診断や検査結果(とくに身体的異常が見られないという結果)をどのように伝えており、患者がそれにどのように反応しているか。②医学的に説明のつかない患者の検査希望を医師が不要だと見なすとき、医師は検査しないという提案をいかに行い、両者はその提案を巡ってどのように交渉を行っているか。③医学的に説明のつかない患者に対して医師はどのように心理的治療(心療内科への紹介など)を勧めており、患者はそれにどう反応しているか。
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Causes of Carryover |
海外出張のために計上していた旅費が、当初見込みよりも安かったため。次年度の出張旅費として使用する。
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