2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02026
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 診療場面 / 処置決定 / 門番機能 / 抵抗 / 会話分析 / 医学的に説明のつかない症状 / 総合診療 / 医療社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に続き、大学病院総合診療科の外来診療場面の相互行為の分析を進めた。とくに、医学的に説明のつかない症状を持つ患者の診療においてしばしば生じる治療方針の交渉について分析を行った。医学的に説明のつかない症状を持つ患者は、しばしば、複数の医療機関を転々としたあとに大学病院の受診に至る。しかしながら、大学病院での検査においても明確な器質的疾患が見出されないため、総合診療科外来医師は、大学病院内の専門科における治療の必要性はないと判断し、経過観察や他院での治療を勧めるというケースが少なくない。この種の勧めに対し、概して患者は抵抗を示し、さらなる専門的治療の可能性を追求する。患者のこうした抵抗は、医師を1つのジレンマに直面させる。患者の希望を反映して治療方針を決めることと、医療資源を適正に配分することとのジレンマである。 治療方針をめぐる交渉プロセスを分析した結果、患者の抵抗の仕方に応じて、医師がジレンマに直面するやり方やそれに対処するやり方に相違のあることが明らかとなった。患者の抵抗は「問題焦点型抵抗」と「医療提供者焦点型抵抗」に大別できる。後者はさらに「不本意焦点型抵抗」と「利用困難焦点型抵抗」に下位区分できる。問題焦点型抵抗は、診断や処置内容に焦点を当てるため、上記ジレンマを顕在化させない。医師はたんに医学的説明を通じて患者を説得する傾向がある。これに対し、医療提供者焦点型抵抗は医師を上記ジレンマに先鋭に直面させる。医師は、不本意焦点型抵抗に対しては、患者にとっての利益や制度的制約を引き合いに出して患者を説得する。利用困難焦点型抵抗に対しては、患者に対して何らかの譲歩を行う傾向がある。こうした交渉プロセスの特徴から、医師が患者の抵抗の仕方に示された道徳性を参照して、抵抗への対処方法を選択していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集とデータ整理はおおむね予定通りに進んでいる。現在までに整理の終えたデータに基づいて、本年度の分析課題について分析を進め、成果を国際的な学術雑誌に投稿し、受理された。ただし、新型コロナ感染症の影響で出張が制約されているため、学会発表等を通じて国内外の研究者と議論することは、十分にできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるので、残された研究課題についての分析を進め、引き続き論文として発表していく予定である。ただし、そのために重要な、海外の研究者との交流が十分にできない状況が続いている。新型コロナ感染症の感染状況が改善したら、速やかに海外出張を行い、必要な研究発表や議論を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で国内外の学会参加のための旅費が執行できなかった。次年度、感染状況が改善して出張が可能になったら、旅費を執行する予定である。
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