2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Text Minig Analysis of the Term "Neo-Liberalism" in Japan
Project/Area Number |
18K02032
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
左古 輝人 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90453034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 計読 / テキストマイニング / テキストアナリティクス / デジタル人文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
パンデミックの影響により外国出張が全て取りやめとなってしまったが、研究の核心部分は遅滞や不足なく完了することができた。 日本語図書、逐刊記事の書誌情報を収集し、構成したデータセットをテキストマイニングの手法により分析し、英語図書、逐刊記事から同様に作成したデータセットと照合しながら考察した。 成果の主要部分は2021年3月、図書の刊行というかたちで公表した。研究代表者の編著書『テキスト計量の最前線 データ時代の社会知を拓く』ひつじ書房。 20世紀、日本語で「新自由主義」と言う場合、それは大きく分けても4通りの異なる対象を指示した。20世紀英米のニューリベラリズム、戦前日本の新自由主義、戦後ドイツのオルド自由主義、1960年代以降のポスト・ケインズ的ネオリベラリズムである。 20世紀後半「新自由主義」という語句がもっぱら指示していたのはオルド自由主義あるいはホブソンのニューリベラリズムだった。これに対して、2000年代後半、「新自由主義」は突如ポスト・ケインズ的ネオリベラリズムと同一視されるようになり、それとほぼ同時にハーヴェイとフーコーによる、これもまた意味内容・指示対象ともに異なるネオリベラリズムが提起された。 21世紀における日本語「新自由主義」を英語"Neo-liberal"と比較すると、英語は中南米ガバナンス、グローバルガバナンス、リアルタイムの事象との関わりが強いのに対し、日本語は国内の政治・行政構造改革(特に教育と労働)、および歴史との関わりが強い。 結論として、「新自由主義」は概念が不明瞭で混乱しているからと言って安易に棄て去るべき流行語ではなく、諸用法を整理しながら有用性を高めることができるだけのポテンシャルを有するキーワードであることを指摘した。
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