2022 Fiscal Year Annual Research Report
From hibakusha to Hi-Ba-Ku-Sha: Study on the Developmental Process of a Global Symbol
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18K02040
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
野宮 大志郎 中央大学, 文学部, 教授 (20256085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 被爆者 / ヒバクシャ / 広島 / シンボル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は二つある。第一に、被爆体験をした個人を「被爆者」と呼び始めたときから、今日のグローバル・シンボルとなるまでの、シンボル化のプロセスを明らかにする。第二に、シンボルとしての「ヒバクシャ」が及ぼす影響を、複数の具体的なイベントを検証し明らかにする。 研究の第一の目的に関して、被爆者がシンボル化する根拠ないしは心的淵源を捕まえるための思索を行った。シンボル化過程を進める力としてキリスト教の思想、特にイエス・キリストの贖罪と他者のために死す行為がアナロジー的に強く働いているのではないかという仮説に辿り着いた。この仮説の可能性を探るため、長崎に出向き潜伏キリシタンの村々を回った結果、この仮説には一定の説明力があるという認識に辿り着いた。 研究の第二の目的に関して、「原爆ドーム存廃論争」と「自衛隊の平和公園行進論争」の2事例の研究からシンボルとしてのヒバクシャが及ぼす影響を探る研究は、「被曝の記憶」が西欧的近代をモデルとする西欧への追従を嫌う戦後の日本的エートスを創出する、という過程の把握にまでつながった。「ヒバクシャ」は、このプロセスで「被曝の記憶」を呼び覚ますシンボルとして使われ続け今日に至っていることもまた確認ができた。 世界的なパンデミックの影響のもとでの研究が続いた。現地調査が大きく制限される中で既存書籍・資料による調査により重点を置くなど、修正研究プランを基本として研究は進められた。2021年度からは、書籍・史資料による研究成果が徐々に出始め、2022年度は、パンデミック状況が和らぎ、本プロジェクト開始当初に計画していた新聞記事を収集する作業をついに開始することができた。完成すれば、新しい史資料として今後の研究を発展させる起爆剤になると考えている。また2022年度は、書籍や海外研究発表などの研究成果も出すことができた。有益な最終年になったと評価している。
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