2020 Fiscal Year Research-status Report
ハーバーマス『公共性の構造転換』の時間・歴史構造とその生成および現代的意義
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18K02041
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
飯島 祐介 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (60548014)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハーバーマス / ブロッホ / 社会学 / ユートピア |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2018年度の研究で析出したユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』(1962年)の時間・歴史構造について、その形成過程を、とくにエルンスト・ブロッホのユートピア論に対するハーバーマスの批判を再構成することを通して明らかにしようと試みた。 2019年度の研究で、この形成過程について、ハーバーマスがマルクス主義受容を契機に歴史を社会学的水準で捉え直す方向へと転回してきたこと、その結果として『公共性の構造転換』が(歴史)社会学的に構成されていることを確認していた。これを踏まえて、2020年度の研究では、①こうした社会学への転回の背景にはシェリングの理性概念――「規制された狂気」としての理性――の受容があること、さらに②この受容の背景として1950年代の連邦共和国で社会的・思想的トピックであったオートメーション化の問題があることを明らかにした。また、③シェリングの理性概念の同時代的受容ではブロッホがむしろ先行していると、しかし同時にこの理性概念に内包される危険――「規制された狂気」が「規制」されず「狂気」へと転落する――がブロッホのユートピア論に潜在していると、ハーバーマスは考えていたこと、④それゆれにブロッホ批判が先鋭化していたことを明らかにした。 以上の成果を踏まえて、論文(「初期ハーバーマスにおける戦後的理性と社会学――ブロッホ批判を手掛かりに」)を作成し、『東海大学紀要文化社会学部』(第5号)上で公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、2020年度は、本研究の締めくくりとして『公共性の構造転換』を構成する時間・歴史構造の特色と現代的意義を明らかにすることを予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大のためドイツでの資料取集を断念したことなどから、そこまで研究を進めることができなかった。しかし、この課題を遂行するために必要となる基本文献の収集は終えており、2021年度中には本研究を終了させることは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、本研究の締めくくりとして『公共性の構造転換』を構成する時間・歴史構造の特色と現代的意義を明らかにすることを目指す。具体的には、(a)テオドール・アドルノやヘルベルト・マルクーゼとの比較対照によって、その特色を明確化する。(b)ここにその輪郭を明瞭に描き出された時間・歴史構造が有する現代的意義を、現代批判理論が直面している課題に応答するための手掛かりとなるという点に絞って、明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行拡大によりドイツでの資料収集を断念し研究方法を変更したため、またそれにともない補助期間を延長したため、次年度使用額が生じた。研究遂行に必要となる文献・資料を購入するために使用する予定である。
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