2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02049
|
Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山本 早苗 常葉大学, 社会環境学部, 准教授 (40441175)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 開発史 / 災害史 / 農村景観 / 観光資源 / 流域保全 / グローバル市場 / 地域ブランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国家プロジェクトの開発拠点として位置づけられ大きく変貌し続ける中国シルクロード域の開発環境史を明らかにすることを目的としている。環境問題と貧困問題が最も深刻な甘粛省でのフィールド調査をもとに、史上最大規模の国家開発(西部開発、一帯一路政策)と環境再生事業を通じた地域社会の再編過程を社会学的に解明することを目指している。 これまで開発拠点でありながら過酷な環境ゆえに研究蓄積が少なかった甘粛省をフィールドに、西部大開発が地域社会や自然環境に及ぼす影響について分析を進めてきた。国家開発により、地域間格差と地域内格差が拡大し、地域の資源利用システムが大きく再編された結果、地域社会の持続可能性が著しく低下していることを明らかにしてきた。 本年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、中国でのフィールド調査を実施することを断念せざるを得なかったため、当初の研究計画を見直し、過去に実施した環境再生事業に関するフィールド調査の資料整理と分析に取り組んだ。具体的には、梯田(段々畑)建設により土壌浸食を防ぎ、農村景観を新たな観光資源として開発し、エコツーリズムや流域保全に取り組んでいる甘粛省蘭州市を事例に、ローカルな草の根レベルでの景観保全や環境再生事業の展開過程を分析し、ローカルな環境利用の変化と持続可能な資源利用のしくみを考察した。グローバル市場を活用して中国最大のバラ生産地となり、地域ブランドの開発を推進していく過程と現在の課題を明らかにすることができた。ただし、フィールド調査で不足している統計データや行政資料等も明らかになったため、次年度以降にフィールド調査を実施する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、フィールド調査を主体に、中国シルクロード域における一帯一路政策がコミュニティに及ぼす影響の実態把握を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により、当初予定していたフィールド調査をすべて中止せざるを得ない状況となったため、研究計画を大幅に見直す必要に迫られた。 本年度実施予定であったフィールド調査については、今後の新型コロナウイルスの感染状況を慎重に見極めながら、次年度以降、実施可能性を検討していきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発の前史(①1950~70年代の公害問題期、②1980年代以降の環境破壊の深刻化)も含めて、これまでの農村開発に関する報告書等の資料収集と地域住民への聞き取り調査を実施する。開発当事者と地域の女性を中心にライフヒストリー調査を行うとともに、当時の日記や写真・記録映像、政府機関による統計資料や行政文書等を収集・分析して、より多面的に開発環境史を描き出す。 当初予定していたフィールド調査については、必要な措置を講じながら実施の可能性を検討する。しかし、今後の新型コロナウイルス感染状況に見通しが立たないため、フィールド調査が実施できない場合に備えて、研究方法の見直しについても検討を進めており、ドキュメンタリー分析などビジュアル調査も積極的に活用していく予定である。具体的には、これまでにフィールド調査で収集した写真や映像資料および一帯一路政策に関するドキュメンタリー資料を用いて、ビジュアル調査を実施するほか、開発事業や環境再生事業に関する報告書や開発当事者の手記や日記などを活用してテクスト分析を実施することにより、フィールド調査を代替する予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、当初実施予定であったフィールド調査を中止せざるを得なかったため、旅費を使用することができず次年度使用額が生じることとなった。
|