2018 Fiscal Year Research-status Report
ライフストーリーを繙く:文学批評理論を援用した解釈学的アプローチの可能性
Project/Area Number |
18K02055
|
Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
横田 恵子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50316022)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 富秋 松山大学, 人文学部, 教授 (30166722)
大北 全俊 東北大学, 医学系研究科, 講師 (70437325)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会学的語りの再検討 / 社会学におけるエリート・インタビュー / ライフストーリーと文学 / 医師の語りが持つ歴史的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)実践的とりくみ:当初の計画に則り、すでに公刊されているテキスト(「医師と患者のライフストーリー輸入血液製剤によるHIV感染問題調査研究―第2分冊:医師の語り」)の中から、それぞれ特定の医師の語りを選び、研究チームに加えて当事者性の高い参加者を加え、それぞれの読みを重ね合わせるブレインストーミングを二回開催した。一回目は、薬害被害を目の当たりにしながらも、自身はポスト薬害エイズ世代の血友病児を育てた母親の参加を得て、8月に開催した。二回目は、遺伝子組み換え製剤の供給開始期に生まれ、ヒト由来の製剤を使わず育った血友病患者の参加を得て11月に行った。「促される形で、医師が血友病やHIV感染について語った言葉を、ただ文字化しただけのテキスト」を初めて目にするゲスト参加者は、語られている内容を理解できる医療的日常を送っており、語りの医学的な内容理解に遜色はない。そのテキスト解釈はそれぞれが極めてユニークで、テキスト作成者・インタビュー調査者でもあった研究者3人とは異なる解釈の視座をテキスト解釈に提供している。
(2)分析枠組みの検討:9月と3月には、連携研究者やオブザーバー参加研究者(社会学、医学)を含め、社会学的な記述として公刊されたテキスト群を、どのような分析枠組みで読み直すことが出来るのかについて、検討を行った。現時点では、(1)アダプテーション理論援用の可能性、(2)歴史学・社会学に対する文学の援用は可能か、(3)社会学内部からの批判的検討(例:エリートインタビューにおけるオーラルヒストリーの有効性の検討、科学社会学的視座から語りの内容を見直すこと、など)がトピックとして検討された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)計画遂行の現状:当初の計画通り、当事者を含めたテキストの読み直しを2回実施することが出来た。また、研究チームの多様性を当初以上に担保することが出来ている。(文学研究者を連携研究者に加えているが、それ以外に、文学社会学、科学社会学、医学生をオブザーバーに加えている)。
(2)議論や検討の成果がまだ論文化されておらず、公開されるレベルに至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)昨年度に引き続き、「薬害HIV」「血友病」に当事者性をもつ様々な属性、世代を研究協力者として招き、「医師の語り」テキストを読む場を設定する。そこから得られる様々な読みを重ねる作業を引き続き行っていく。
(2)多領域の研究者(医療社会学、エスノメトドロジー、医療と公衆衛生の倫理、科学社会学、日本近現代文学、医学)による新しい分析枠組みの提示を本格化させる。
|
Causes of Carryover |
当該年度は、ほぼ計画に沿った形で研究の進捗が見られたため、概ね予算立てした通りに執行した。事務補助アルバイトの勤務日数が予定より若干少なくなったため(長期休暇中には勤務せず)、次年度に若干の繰り越しを行うことになった。
|
Research Products
(1 results)