2020 Fiscal Year Research-status Report
ライフストーリーを繙く:文学批評理論を援用した解釈学的アプローチの可能性
Project/Area Number |
18K02055
|
Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
横田 恵子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50316022)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 富秋 松山大学, 人文学部, 教授 (30166722)
大北 全俊 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70437325)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 血友病・HIV治療 / 医師の語りの読み直し |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナウイルス禍で課された各種制限の中で研究課題を遂行するというジレンマを、終始突きつけられたままの1年となった。特に、研究計画の中で最も重視している「すでに刊行したHIV診療専門医・血友病診療専門医の『語り』について、新たな関係者たちと共にテキストを読みなおし、語り合うことで重層的な再解釈の試みを行う」という研究については、「『社会問題としてのHIV感染症』を位置付け直す試み」として、最も肝要な研究活動と位置付けていたが、研究協力者数名との対面での合議の実現は困難であった。2020年度は(延長願いを出すまでは)最終年度に相当していたため、代替できる方法なども模索したが、やはりオンラインミーティングでの深い議論は不可能であった。 一方、、思いがけず新たな資料を発掘する展開となったことは僥倖であった。1993年から2004年にかけて、84号に渡って一人の当事者の手によって編集発行されたミニコミ誌「H.I.Voice」を全号入手することが出来たのである。1990年代を中心に、ともすれば政治的な側面が注目されてきたHIV感染症ではあるが、今回入手できたミニコミ誌は、資料としての趣を異にする。本誌は、表立っての活動や団体活動などに積極的ではない一個人の発行であり、配布先も個人的な関係者のつながりが多い。 本研究のメイン課題である「医師たちの語りの再解釈」で対象とする「語り」は、すでに逐語録作成時に医師本人の編集がされている上に、刊行時には聴き手であった社会学者による編集の手も入っている。したがって、2020年度思いがず手にすることが出来たミニコミ誌を分析し、両者を対比させることで、本来の研究がより厚いものになるという期待を持っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社会状況による集会の制限により、研究協力者との会合を持つことが十分に出来なかった。オンラインでの会合も試みたが、十分な成果を得るには至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は延長後の最終年度にあたるため、当初の研究計画で想定していた「研究協力者との対面によるブレインストーミングにより、テキストの再解釈を紡ぎだしていく」という方法を保持しつつも、その研究目標と実施スタイルだけに重心を置くのではなく、新たに入手したミニコミ誌「H.I.Voice」(1993~2004)の分析を研究計画に加えることにする。 後者の研究トピックは研究代表者と分担研究者のみで行うこととし、研究を確実に完遂させる補助線とする。研究者同士の会合は、オンラインであっても十分に進展するであろうことは(昨年度の諸々の体験から)確信するものである。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、予定していた研究集会などへの出席などがすべて取りやめとなり、確保していた旅費を使うことがなかったため、使用額に差が生じた。
|