2022 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアシステムが遠距離介護に与える影響についての研究
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18K02062
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鍋山 祥子 山口大学, 経済学部, 教授 (00335762)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遠距離介護 / 地域包括ケアシステム / 別居子 / 高齢者介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究成果を踏まえ、老親の介護拒否への対処方策について考察を進めた。遠距離介護支援をおこなう複数の事業者や経営者、別居子と要介護高齢者をつなぐ役割を担っているケアマネジャー、また経済行動学における「ナッジ理論」に基づく認知バイヤスに着目して介護拒否について考察をする研究者などへの聞き取りを実施した。 研究を続けるなかで、介護領域では対応が当たり前になってきている別居子への対応が、医療領域(病院)では未だにできていない現状が明らかになった。身寄りがいない高齢者への対応についての指針は厚生労働省によって出されているものの、子どもがいる場合には、その子どもが別居子であったとしても、「家族だから」という理由で、子ども側の仕事や生活の事情を無視して、実質的には難しい対応(入退院の手続きや通院、あるいは洗濯などの入院介助)を医療機関が別居子に迫るというケースが多く見られるということがわかった。 2023年度は本研究の最終年度にあたるため、地域包括ケアシステムの医療と介護、そして地域において、遠距離介護はどう支えられていく可能性があるのかをまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査を研究の柱としていたが、コロナ禍により対面のインタビュー調査が難しくなり、その代替として、調査対象を全国に広げ、より多くの回答者から自由回答を得ることができる質問紙調査を実施した。遠距離介護の実践者への調査からは親の介護拒否の現状と遠距離介護との関係が明らかになり、またケアマネジャーへの調査からは遠距離介護の継続に有効なファクターが抽出できた。 さらに、当初は想定していなかった医療分野(病院)における遠距離介護(別居子)への対応の問題点が明らかになり、当初の予定を超えて、2023年度には病院またはその利用者に対する調査を実施する予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域包括ケアシステムの遠距離介護への支援・対応の障壁として、これまで明らかになったのは、別居子への情報共有や連絡のとりずらさである。解決方法としては、介護サービス事業者側のデジタル化(医療・介護・行政・別居子など関係各位との情報共有)の必要性である。これについては、あらためて研究課題として切り出すとして、2023年度は、遠距離介護の実践にとって避けては通れない医療(病院)における別居子への対応の現状を明らかにする予定である。厚生労働省の指針を精査するとともに、病院の対応や別居子の状況などを把握することで、小家族化する日本において、これまで「家族」が担うべきとされていた役割の現時点での妥当性を検討する。それにより、地域包括ケアシステムが遠距離介護を支える条件を抽出する。
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Causes of Carryover |
2022年度には、研究成果についての出版を進めており、そのやりとりに時間がかかったことと(現在原稿について、出版社と協議を進めている)、海外の学術誌『Nursing Science Quarterly』への投稿に時間がかかったこと(2022年10月に掲載が決定したが、現時点でまだ掲載はされていない)により、年度内に本研究をまとめるに至らなかった。そのため次年度使用額が生じた。2023年度には、医療場面において別居子がかかえる問題を明らかにするための調査を新たに実施する。そのために、予算を使用する。
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