2018 Fiscal Year Research-status Report
未来の剥奪:貧困の〈生活-文脈〉の縦断的理解を通して
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18K02066
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
宮内 洋 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (30337084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松宮 朝 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (10322778)
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
打越 正行 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (30601801)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 貧困 / 〈生活-文脈〉 / 子ども期 / 青年期 / 老年期 / 公営住宅 / まなざし |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「未来の剥奪:貧困の〈生活-文脈〉の縦断的理解を通して」の目的は、生身の身体を伴ったフィールドワークに基づいた、貧困研究の深化にある。「貧困研究とトラウマ」(宮内2015)にて、その一部を明らかにしたように、本研究では、幼少期の貧困が当事者の「未来」、より正確に言えば、自らの人生を信じた上での生活設計、さらには将来の「時間的視野」まで奪ってしまう可能性に注目する。「貧困と排除の発達心理学序説」(宮内2012)で指摘したように、各個人における貧困の影響はその年齢によって異なることから、日本国内の各地域における子ども期・青年期・老年期の三つの各段階における参与観察に基づく繊細な質的調査をおこない、その貧困における〈生活-文脈〉を理解することによって、「未来の剥奪」の具体的プロセスを個人の生活世界の側から明らかにする。 本研究の独自性にもかかわるが、各メンバーによるフィールドワーク及び社会調査が基本となる。メンバー全員による研究会を定期的におこない、【各自のフィールドワーク→研究会における議論と振り返り→各自のフィールドワーク→研究会における議論と振り返り→・・・】というサイクルによって、本研究を進めている。このようなサイクルを繰り返すことによって、各自のフィールドワークのブラックボックス化を避けることができると考えられる。すでに互いの〈生活-文脈〉を理解し合うメンバーだからこそ、各々のフィールドワークにおける様々な文脈までもが理解が可能となる。 具体的には、①主に高齢者の貧困に関する〈生活-文脈〉理解として、愛知県と群馬県内の公営住宅を対象とする参与観察と聞き取り調査を行っている。次に、②群馬県を中心に、教師の子どもの貧困認識を〈生活-文脈〉の観点から調べている。最後に、③下層若者の〈生活-文脈〉理解として、沖縄県でフィールドワークを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、共同研究者の各々のメンバーが、それぞれのフィールドにおいてフィールドワーク・調査を展開することが、当初の計画であった。メンバー間の進展の相違は当然ながらあるが、順調に進んでいると言えるだろう。 それのみならず、各メンバーが共同して、自治体での聞き取り調査や公営住宅でのフィールドワークも行うことができた。 さらに、『北海道大学大学院教育学研究院紀要』131号に掲載された「貧困調査のクリティーク(3):『まなざしの地獄』再考」という共著論文を完成させることができた。このことは、2ヶ月に一度、共同研究者が一堂に会して、各々のメンバーによる各々の社会調査・ フィールドワークの成果発表だけではなく、先行研究の検討を通しながら、今後の貧困研究の方向性を考える議論を繰り返してきたからである。今後も同様に展開していく予定である。当初の計画は十分にクリアしたと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者の各々のメンバーが、それぞれのフィールドにおいてフィールドワークおよび社会調査を展開するとともに、概ね2ヶ月に一度、一堂に会して、各々の研究成果の発表をするとともに、先行研究の検討を通すことによって、共著論文を完成させることができた。共同研究の初年度としては十分な成果だと思われる。今後もこのペースで、科研費による研究成果を次々に発表していく予定である。 さらに、私たち研究グループがシンポジウムを開始することによって、本研究の成果を社会に還元しようと現在、計画している。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金を支出せず研究を進行できたメンバーがいたために、使用額が当初の計画よりもわずかに少なくなった。
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Research Products
(8 results)