2018 Fiscal Year Research-status Report
The harm reduction approach in the East Asia: its influence, adoption and development to the existing social care systems for PUDs (persons who use drugs
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18K02068
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
徐 淑子 新潟県立看護大学, 看護学部, 講師 (40304430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 光穂 大阪大学, COデザインセンター, 教授 (40211718)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハームリダクション / 薬物使用者 / 社会的ケア / 東アジア / 翻訳的適応 / 外来概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル・スタンダードになりつつある優れたアプローチが、その発祥の地から他の国・社会・文化へと広まっていく過程で、新しいアプローチへの抵抗や「ローカライゼーション」というチューニング(部分調整)がかならず起こる。ある新しい実践モデルの移入に対する抵抗が生じている時、受け入れる側では何が起きているのか。 「ハーム・リダクション(危害低減)」という、1980年前後に創始された薬物依存者支援アプローチがある。 本研究は、このアプローチの、日本を含む、東アジア地域での受け入れとローカライゼーション、移入による既存のケア・システムへの影響を、上のような視座をもって、エスノグラフィーの手法により明らかにするものである。東アジアでの状況を検討する際、ハーム・リダクションの早期採用地域である欧州(オランダ等)を参照事例とする。 研究結果を、1)日本を含む東アジアにおける、依存症ケアや薬物対策へのオプションを増やすための議論の活性化、2)薬物問題についての国際連携の推進と、それぞれの国における経験・情報の共有に資する。 本年度は、当該研究課題の初年度にあたり、主として、調査のためのフィールド調整を行った。日本国内では、最新情報の収集、インタビューガイド編集のための予備調査、国外フィールドにかかわる文献調査を行った。国外での研究活動では、韓国でのフィールド調整を行った。そして前研究課題(挑戦的萌芽研究15K13084)の調査地であるオランダを中心に、欧州のハームリダクションおよび薬物対策についての追加の情報収拾および訪問調査を行った。 また、本研究の理論的フレームワークである「翻訳的適応」に関連する文献を収集し、整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・徐を中心に、韓国の調査協力者とのリエゾンを進めた。フィールド調査等に備え、現地の薬物・アルコール問題についての基礎資料を収集した。 研究分担者・池田は、韓国他、台湾など東アジア地域における薬物問題の歴史的経過についての基礎資料を整理し、次年度以降の論文公表に備えて、ドキュメント・アーカイブを作成した。その成果の一部をインターネット上で公開した。 当該年度前半の研究成果のうち、前研究課題(挑戦的萌芽研究15K13084)との連続性がある部分を、速報として海外学術集会等で4件発表した。うち1件は専門国際学会でのシンポジウムとして行った。研究代表者・徐がオーガナイザーおよびチェアーを務め、日韓の研究協力者4名とともに4題からなる発表を行った。 また、日本語論文の専門誌への投稿を2件行った(うち1件は印刷中、もう1件は査読中)。 研究計画書を英文化し、現在までの英文の研究成果を整理したものと併せて、海外研究協力者との情報共有に資した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に行うべき研究活動は、以下の点に大別できる。 1) インタビュー調査の実施準備(各国での倫理審査申請、インタビューガイド等の整備、データ採取スケジュールの確定等)を行う。 2)日本国内でのインタビュー実施の他、フィールド調整の進んだ韓国でのインタビューを早期に実施する。 3) 本研究の理論枠組みである「翻訳的適応」概念を、日本における外来語使用、医療分野での外来概念の導入と定着という観点より整理・検討する。医療のグローバル化や「グローバル・スタンダードとは何か」といった問題意識にリンクさせて、議論を展開する準備を進める。 4) 前研究課題(挑戦的萌芽研究15K13084)との連続性のある成果を中心に、論文投稿を行う。また、本研究課題の成果を反映した、海外研究協力者との共著論文の準備を行う。
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Causes of Carryover |
使用額の差額は、研究分担者・池田への配分額の2018年度残により生じている。 2018年度は、当初予定のなかった研究成果速報(国際学会でのシンポジウム)を、年度を前倒して実現できた。その実施にかかわる諸経費は、主として研究代表者・徐の配分額内より支出し、年度内に経費の前倒し申請を行った。一方、池田は、当該助成金だけでなく、所属部局の他の財源等を用いて、本研究課題の諸活動に充当させ、当該助成金を節約した。池田配分の研究費の差分で、今後の研究費使用計画を調整することができた。 今年度以降は、海外研究協力者への調査委託費、成果発表にかかわる諸経費、調査旅費などでの支出を計画している。
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Research Products
(13 results)