2020 Fiscal Year Research-status Report
<老年期の中国残留孤児>の孤独の実態と原因に関する研究
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18K02080
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
鍾 家新 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (10281552)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国残留孤児 / 老年期 / 孤独 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年では、日本に「帰国」後の中国残留孤児と町内会・自治会とのかかわりの実態や<老年期の中国残留孤児>の孤独に対するそのかかわりの影響を分析した。つぎの内実が究明された。 (1)中国残留孤児は日本に「帰国」後、日本政府の行政措置によって日本全国に分散され、生活している。中国残留孤児には、町内会・自治会への加入の状況の差がみられる。中国残留孤児の中で、肉親が見つけられ、肉親の元の地域にもどって生活している人は近隣の日本人住民に受け入れられている。彼らの中には、町内会の「体育部長」や「防災部長」などを務めた人もいれば、町内会の会長の役割を果たした人もいる。町内会の会長を担任した人は日本に「帰国」する前、中国東北の農村で成長し、「生産隊長」を担任した人であった。町内会に加入し、町内会の巡回・祭り・町の美化活動に積極に参加する中国残留孤児は所在地域の住民とかかわる頻度を増加させ、地域の一員としての参与を体験し、地域にある種の連帯感をもっている。町内会活動への積極的な参加は、彼らの老年期の孤独の緩和につながっている側面がみられる。 (2)中国残留孤児の多くは肉親を見つけず、肉親の元の地域にもどって生活することができない。日本に「帰国」後の彼らの多くは所在地域での都営住宅や県営住宅に住み、生活している。多くの残留孤児からみれば、町内会・自治会の活動は面倒なことであり、参加する価値がないと考えている。彼らは町内会・自治会に加入しないか、あるいは加入しても町内会や自治会の活動に参加しない。自宅に籠り、近隣の日本人と交流しない中国残留孤児が多い。このような状況に陥っている重要な要因の一つは中国残留孤児の日本語の習得レベルが低いことである。町内会・自治会への中国残留孤児の不参加は地域の一員の自覚をもちにくく、彼らの老年期の孤独を増幅させている傾向がみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマの聴き取り調査に協力をしてくれた中国残留孤児は老後の生活実態、特に町内会・自治会とのかかわりの状況を率直に語ってくれたので、現在までの研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの聴き取り調査の内容に基づき単著をめざしてまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額はほとんど生じていない。翌年度分として請求した助成金と合わせ、研究成果の公表・発信に使用する。
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Research Products
(1 results)