2018 Fiscal Year Research-status Report
実践共同体における社会福祉実践の継承過程の構造-中動態における事象に着目して-
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18K02082
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 教授 (20257059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソーシャルワーカー / 中動態 / 実践共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「中動態」で生起する臨床体験を支えている「実践共同体」内部における事象を分析することで、その構造を明らかにし、ソーシャルワーカーが実践力を身につけるために有効な社会福祉現場のあり方の一つを明らかにすることが目的である。 今年度は、研究実施計画沿い先行研究を吟味した。松本(2012)は「実践共同体」にかかわる先行研究は3つあるとする。すなわち、その概念を提唱したJ.Lave and E.Wenger、ナレッジ・マネジメントへの研究へと結び付けたWenger,McDermott and Snyder、組織論として展開したBrown and Duguidによる研究があり、松本はこれらの概念的共通点や相違点をまとめている。そして「実践共同体」は、従来のJ.Lave が示した社会的歴史的文脈において埋め込まれているものだけではなく、Wenger,McDermott and Snyderは、実践共同体を「育成が可能なもの」として位置づけていると言う。 これまでの調査研究において筆者は、主として前者を取り上げてきた。しかしながら、社会福祉の実践現場においては、後者に属する事例検討会やスーパービジョンといった、ソーシャルワーカーによって自主的に組織化された学習の場があり、それがソーシャルワーカー養成において一定の機能をはたしている。そこで本研究では、前者のみならず後者にも視点を拡大し、学習の組織として比較的に歴史の浅い「育成された実践共同体」に着目し、調査研究を進めていくことにした。今後は、こうした3つの概念を念頭に置きながら、先行研究が進んでいる教育学分野の先行研究をレビューする予定である。
・松本雄一(2002):実践共同体概念の考察:3つのモデルの差異と統合の可能性、関西学院大学 商学論究、163-202
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究実施計画通りに、主としてJ.Lave and E.Wengerを中心とした先行研究をレビューすることで、「実践共同体」の概念を整理することができた。 調査については、関西地区に「育成された実践共同体」として事例検討会を展開している組織に関する情報を得ることができた。現在は、この組織で調査を実施させていただける可能性について検討を重ねているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、さらに先行研究のレビューを進める。具体的には、ここ数年間において体系的な研究が進められてきている教育学や商学分野の文献を今後は吟味するとともに、精神医学や看護学分野において議論が活発になされはじめた「中動態」に関する研究をまとめる。 次に関西地区で開催されている事例検討会へ複数回出席することで、調査協力予定者と関係をつくる。さらに、調査協力予定者が所属する組織についても、調査の実施が可能かを打診し、来年度内で調査の設計を終える予定である。
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Causes of Carryover |
科研費を獲得したことによって、今年度は所属大学の個人研究費が増額されたため、その範囲で研究出張や文献購入ができたため、本研究費はまったく利用しなかった。しかしながら、次年度は関西地区で開催される事例検討会へ定期的に参加する予定であるため、今年度及び次年度の助成金は計画的に使用する予定である。
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