2020 Fiscal Year Research-status Report
実践共同体における社会福祉実践の継承過程の構造-中動態における事象に着目して-
Project/Area Number |
18K02082
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 教授 (20257059)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ソーシャルワーカー / 中動態 / 実践共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ソーシャルワーカー(以下、ワーカー)の自己生成における「節目」となる臨床体験は「中動態(巻き込まれ続けること)」で生起し、その「中動態」を支える「実践共同体」の内部構造を詳細に分析することを目的としている。 今年度は昨年度の先行研究のレビューや調査計画の見直しを踏まえ、新たな調査計画を立案した。具体的にはコロナのために遠方の出張が不可能となったため、調査地を研究者の勤務地近隣とし、そこで地域に根差した実践を展開してきた、臨床経験10年以上を有する高齢者及び障害等の相談機関に所属するソーシャルワーカーを対象とした調査を実施することとした。 調査にあたり調査項目を精査するために、数人のワーカーにインタビューを実施し、意見を聴取した。その結果、一人前となる以前の自己生成過程における重要な臨床体験の語りからは、所属組織外の実践共同体への関与が大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。そして、所属組織外の実践共同体へ参加したワーカーは、そこで得た専門的価値・知識・技術、学習様式などを所属組織へ導入し、新たな実践共同体を形成していた。すなわち、実践共同体自体が継承され新たな共同体を形成している可能性が見いだされたのである。 そこで新たに調査を実施するにあたり、これまでの調査項目を見直した。これまでは調査協力者に対し、所属組織内の実践共同体を焦点をあてたインタビューを実施する予定であったが、今後は所属内外の双方の実践共同体にまつわる内容を聞き取ることにした。 以上プロセスを経て調査計画を完成させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、研究者が所属する勤務地の近隣で調査を実施する予定であったが、コロナの影響があり、近隣への移動にも制限がかかる状況になったため、新たな調査協力者の選定することとなった。しかしながら、調査協力者選定にかかわる調整、及び先述した調査項目の検討に関して、想定以上の時間を要する結果となり、最終的に調査協力者への依頼の目途がたったのは12月であった。 その後年明けに調査計画を完成させ、本学の研究倫理審査に申請し承認を得て調査協協力者への依頼を開始し、調査日程を調整した。
|
Strategy for Future Research Activity |
4月より調査を開始し9月までにはインタビュー調査を終了する。調査終了後すぐ逐語録を作成しながら分析も同時並行で進め、12月には分析を完了する。分析にあたっては、ナラティヴアプローチや現象学における知見や視座を活用しながら、事例分析法を用いる。具体的には、ワーカーの自己生成とワーカーの所属する機関内外の「実践共同体」との連関、及び「実践共同体」間における事象を掘り起こし、それを時間や空間の観点から分析を進め、社会福祉実践の継承過程を明らかにする。 結果については、3月末までまとめて調査報告書を作成するとともに、学内紀要に投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度に実施予定であったインタビュー調査が未実施となったため、これにかかる旅費、謝礼にかかる支出全てが未使用となった。次年度は調査を実施するため、今年度の未使用額はこれに支出される予定である。
|