2021 Fiscal Year Research-status Report
実践共同体における社会福祉実践の継承過程の構造-中動態における事象に着目して-
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18K02082
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 教授 (20257059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャルワーカー / 中動態 / 実践共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルワーカー(以下、ワーカー)の自己生成における「節目」となる臨床体験が生起する「中動態」の位相を支える「実践共同体」の内部構造を詳細に分析することを目的とした今年度の研究では、昨年度に得られたナラティブテキストを詳細に分析した。 その結果、ワーカーの臨床経験の長さによって、実践共同体との関与の仕方に変化がみられることが明らかになった。すなわち、所属組織内外の研修システムが整っていない時期に一人前になった臨床30年以上を有するワーカーは、自らが所属組織外に実践共同体を創設し、その体験をもとに所属組織内の実践共同体を形成していた。 これに対し、所属組織内外の研修システムがある程度整い始めた臨床経験20年程度のワーカーは、所属組織内における上司によるスーパービジョン(これを小さな実践共同体と定義する)によってワーカーとしての基盤を固め、一人前以降になってからは、所属組織外の研修システムを活用しながら、所属組織内で実践共同体を形成するという、臨床経験30年以上のワーカーとは相反するプロセスを経ていた。 さらに、「あるテーマにかんする関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく」とされる実践共同体であるが、ソーシャルワーカーの自己生成におけるプロセス上、実践共同体で継承されているのは「知識や技能」というよりも「価値とその伝承の重要性」であることが明らかになりつつある。 その後はさらなる分析を進めるとともに、新たに2名程度のワーカーを対象とした調査の実施に向け、調査委協力者に調査を依頼し了解を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度末から開始したインタビュー調査を継続し、2名のワーカーを対象とした調査を実施した。その後、スノーボールサンプリングにて更に2名のワーカーを調査する予定であったが、コロナウィルス感染症の拡大の影響により、筆者の学内業務が増大したことや調査協力者の所属施設において部外者の立ち入りが禁止される状況になるなど、調査の実施が難しい時期が長引き、必要なデータ全てが収集できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、臨床経験40年以上のワーカー及び、臨床経験10年程度のワーカーを対象とした調査を、9月までに実施する予定である。そして、これらのデータを加えた上で、一連の実践共同体の構造を分析する。ナラティヴアプローチ及び現象学の知見を活用した事例研究法を用いて、12月までに分析を終了する。具体的には、10~40年の臨床経験年数を10年ごとに区切り、実践共同体の構造に影響を与える各時期における社会福祉の臨床の状況を勘案しながら、臨床経験年数を越えすべてのワーカーに継承されている事象の有無を明らかにし、有るとするならば、その事象の生起する時間や空間の構造を詳細に分析する。 結果については、3月末までの調査報告書を作成するか、もしくは再来年度の学内紀要に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に実施したインタビュー調査の協力者については、次年度にも補足の調査を実施する予定であることから、謝礼にかかわる支出は全て未使用となっている。今年度の未使用額は、次年度に実施予定である新たな協力者を含んだ調査で使用する予定である。
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