2020 Fiscal Year Research-status Report
Theory and Methods of Developmental Community Welfare
Project/Area Number |
18K02083
|
Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉村 輝彦 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (80434611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 隆之 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (70183580)
穂坂 光彦 日本福祉大学, アジア福祉社会開発研究センター, 研究フェロー (10278319)
朴 兪美 日本福祉大学, 権利擁護研究センター, 客員研究所員 (10533383)
小木曽 早苗 日本福祉大学, アジア福祉社会開発研究センター, 客員研究所員 (70728154)
小國 和子 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (20513568)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 開発福祉 / 地域福祉 / 社会開発 / 生活保障メカニズム / 地域共生 / 中間的社会空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的排除を克服する都市部被差別地域、地域再生が課題となる中山間地域や被災地域、コミュニティの再構築が課題である集住居住地域、そして、地域によって制度ギャップを埋める多様な生活保障プログラムを生み出してきたフィールドを対象にしている。 2018年度から継続して、定点観測を行ってきており、多様な地域共生空間づくりや複合的な視点を持ち合わせ、多様な人々を包摂する多彩なプログラムづくり(箕面市北芝地区)、集落福祉や開発福祉の推進、地域資源を生かしたコミュニティの支え合いやその働きかけ(高知県土佐町、中土佐町他)、被災地での地域再生(福島県、宮城県他)、団地におけるコミュニティプレイスづくりの推進のためのプラットフォーム(知多市や名古屋市)等の事例を踏まえた検討を行ってきた。2020年度は、コロナ禍において、フィールドワークの多くは実施できず、オンライン形式での研究会等を中心に、議論を進めた。合わせて、オンライン形式での多様な地域実践を学び合う場に参加し、意見交換をすることで、実践事例を収集するとともに、それらを踏まえた検討を行ってきた。 安定的な基準で、対象を選別できる定常的な文脈を前提に機能してきた制度が、十分に機能しない状況に加えて、コロナ禍において、どのように諸課題に対応するのかにも関心を広げて検討を進めた。予期しない変化への順応的対応が求められる中で、地域が抱える問題等に対応するために、いくつかの地域では、創意工夫の上でできることに取り組む実践が行われていた。こうした多様な生活保障メカニズムとそれを支える仕組みを踏まえて、開発福祉の生成プロセス及びそれに対する支援アプローチの精緻化に向けて、様々な機会を活用して議論を進めた。 研究成果は、論文としての学会発表や大学院の履修証明プログラム「地域再生のための『福祉開発マネジャー』養成プログラム」への反映等で発信した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、「開発福祉」とは、制度の狭間にある人も含め地域で生活を互いに支え合うメカニズムを住民自らがつくり出すプロセスであり、同時にそれは、地域の中で人びとの関係を再生させることを通じて、市場から排除されがちな人にも地域の社会参加の機会を広げ、人びとの生活が経済的にも開かれていくプロセスである。さらに、それらを促進するための支援アプローチをも指す。制度外環境等で地域によって生み出されてきた多様な生活保障メカニズムがどのように生成してきたのか、国内外のフィールドワークを通して実践事例を整理し、研究会での検討等を通じて一定の理論化と支援方法のモデル化を行うことを目指している。これまでに、地域再生が課題となる中山間地域や被災地域、社会的排除を克服する被差別地域、コミュニティの再構築が課題である集住居住地域等多彩なフィールドを対象に、議論を進めてきた。2020年度は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、制度の想定を超えた事態に直面する中で、どのような取り組みを行ってきたのかにまで射程を広げて検討を行なってきた。 2020年度は、結果的に、フィールドワークの多くは実施できず、オンライン形式での研究会等を通して研究メンバー間で適宜情報共有を行い、理論の精緻化に向けて多様な視点から議論を進めてきた。合わせて、コロナ禍において、オンライン形式での学びの場への参加を通して、開発福祉に関わる新たな地域実践事例の収集を行うとともに、新たな視点を獲得してきた。また、関連学会や研究会への参加を通して、最新の有益な情報を入手すると同時に、参加者と議論することを通じて、これまでの学びを相対化させてきた。 研究は一定程度進めてきたが、コロナ禍において、予定していた国内外のフィールドワークや研究会等が十分に実施できず、進捗状況としては、「やや遅れている。」とし、期間を延長して引き続き取り組んでいく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、国内外の多様なフィールドにおける制度外環境等で地域によって生み出されてきた多様な生活保障メカニズムがどのように生成してきたのか、実践事例を整理し、フィールドワークと研究会等での検討を通じて、実践事例に通底するメカニズムと支援方法を描き出し、一定の理論化とモデル化を行うことを目指していた。これまでの研究を通じて、実践事例の整理や枠組みの構築を含めた一定の理論化及びその精緻化を進めてきた。しかしながら、2020年度に関しては、コロナ禍において、フィールドワークの多くは実施できず、オンライン形式での研究会等を中心に、議論を進めてきた。 今後は、コロナ禍が続くことを踏まえ、国内フィールド(地域福祉・集落福祉領域:高知県下市町村他、コミュニティマネジメント領域:大阪府箕面市北芝地区、愛知県名古屋市・知多市UR都市機構団地他、災害復興領域:宮城県女川町・福島県浪江町他)を中心に、引き続き、定点観測を行いながら、実践事例の動きを追っていく。これまでのフィールドワークや研究会等における議論を踏まえ、開発福祉の生成プロセス、そのメカニズム及び支援アプローチについて詳細な検討を進め、最終的なとりまとめにつなげていく。そして、対面形式あるいはオンライン形式でのフィールドワークや研究会等の実施を想定している。なお、コロナ禍ではあるものの、研究者・実践者の共同研究体制のみならず、フィールド拠点相互の交流を図っていく実施方法を探求することで、相互の学び合いとそのインタクラクションによる創発を意識した研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
国内のフィールドワークの多くが実施できなかったことに伴い、旅費の支出が減額となった。また、研究会の開催においても、同様に実施回数が減ったため、そして、オンライン形式で実施したため、交通費や謝金の支出が減額となっている。一方で、コロナ禍においても、他の実践事例からの学びや理論的な検討を中心に、実践事例の整理や枠組みの構築を含めた一定の理論化及びその精緻化を進めてきた。 次年度においては、コロナ禍ではあるが、状況を見極めつつ、国内のフィールドワークや研究会等については、対面形式あるいはオンライン形式での実施を想定している。 また、研究成果の対外的発信のために、各関連学会参加や学会発表についても、積極的に行う予定である。
|
Research Products
(7 results)