2018 Fiscal Year Research-status Report
災害ソーシャルワークモデルの構築:被災地ソーシャルワーカーの語りと対話から
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18K02091
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
中尾 賀要子 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (90584988)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害 / ソーシャルワーク / 社会福祉士 / 東日本大震災 / 福島 / 質的研究 / インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、震災被災地のソーシャルワーカーの語りと対話を通して、長期的視座に立脚した災害ソーシャルワークモデルを構築し検討することである。初年度は、東日本大震災の被災地である福島県県北地域から本研究の調査対象となるソーシャルワーカーを見出し、本研究の説明及びインタビューの依頼と調整を目標とした。 調査対象となるソーシャルワーカーの選抜において、①震災発生前から現地で福祉支援に従事し、②今日まで継続して現地で福祉支援を行い、③今後も現地において福祉活動を続ける予定であり、④震災にまつわる自身の経験や実践等について自分のことばで語ることができ、かつ⑤本研究への協働に賛同するソーシャルワーカーという5つの基準を設定し、2018年8月に研究協力者である福島県社会福祉士会県北方部に所属する社会福祉士3名と共に該当者について相談・検討した。 その結果、震災後に組織された福島県相談支援専門職チームにおいて、各部門のリーダー的役割を担ったソーシャルワーカー8名が候補者として推薦された。そこで2018年10月にこの候補者らとの顔合わせを依頼し、研究者の自己紹介と研究の説明をする機会を設けることができた。さらに2019年2月にもこの8名に加えて、同じく福島県相談支援専門職チームに関わった保健師1名との打ち合わせが実現し、本研究への参加について内諾を得ることができ、対話予定となる他の被災地について意見交換をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は参加型アクションリサーチであり、5ヶ年に渡る研究活動の遂行には被災地に根差すソーシャルワーカーとの協働が欠かせない。複数の被災地ソーシャルワーカーらの語りと対話を主要データとして捉えている本研究において、今年度の福島のソーシャルワーカーとの打ち合わせが成功裏に進んだことは、今後予定している他の被災地との対話に向けて有意義な足掛かりを得られたと考える。 特に本年度のうちに2度の打ち合わせが実施できたことで、研究者とインタビュー対象者においてだけでなく、インタビュー対象者の間でも相互理解が進んだ印象を受けた。全員が震災前からお互いに顔見知りであったにも関わらず、震災後の福島においてどのようなソーシャルワークを展開してきたのか、何に立ち止まり、何をきっかけにまた動き出したのかなど、ふりかえりの機会はなかなか持ちにくいとのことであった。これは副次的成果でありながら、次年度に予定しているインタビューの意義が裏付けされたと考える。また、次年度のインタビューは、次々年度以降に予定している他の被災地ソーシャルワーカーとの対話に向けた環境の醸成ともいえる。以上の点を加味し、本年度に関しては順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を受けて、次年度は福島のソーシャルワーカーのさまざまな経験やそこから生まれた考えをさらに掘り下げるインデプス(綿密な)・グループインタビューを予定している。インタビューのデータは質的に分析する予定だが、その暫定的な結果を学会報告及び研究レポートとしてまとめたいと考えている。 なお、当初本研究で計画していた熊本については、地震発生から数年が経過したものの今なお余震の規模が大きく、現地で福祉支援に携わる方々の現状には十分に配慮したいとの声があり、対話の実現については慎重に検討していくことで合意した。次年度はインデプス・グループインタビューに加え、次々年度に予定している他の被災地のソーシャルワーカーとの対話について、具体的な調整を図る予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入予定としていた物品より安価でありながら同スペックの商品が入手できたこと、また当初予定していた旅費を所属大学からの褒賞金で支払ったため、次年度使用額が生じた。この額については、質的分析のソフトウエア最新版の購入に充てたいと考えている。
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