2018 Fiscal Year Research-status Report
ネット依存症の課題に対応した家族教室のプログラム作成
Project/Area Number |
18K02096
|
Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
松本 宏明 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (90625518)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 洋一 鹿児島国際大学, 福祉社会学部, 教授 (20369185)
石井 宏祐 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (30441950)
増田 彰則 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (10347099)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | インターネット / サポートグループ / ゲーム / アディクション / 家族療法 / 自助グループ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、家族を通じた間接的支援の観点から、心療内科クリニックで既に実施中の、ネット依存家族会のプログラムの効果研究を柱に、プログラム作成を行う。家族会の現状の検討、および家族へのアンケート調査を手掛かりに、方法論として発達障害の子どもへの介入としてのペアレント・トレーニング、依存症者家族の対応としてのCRAFTを導入したプログラムの効果検証を導入する。これらを通じて、①ネット依存の状態像に対応②少人数スタッフでも、実行可能③1回の参加でも、家族が参加して良かったと思える、この3点を満たすプログラムの作成を目的とする。 本年度は、①ネット依存家族会の基礎となるネット依存に関する基礎調査および②家族会での事例研究を行った。①として、増田ら(2018)では、県内の小中高生8680名を対象にアンケート調査を実施した。小学校低学年の男子が既に高いゲーム依存であり、依存症の基準を満たすのは、小学校低学年の男子において17%となっていた。これまで患者層としては中高校生が中心とされてきたゲーム/ネット依存だが、本研究からは、早期対応が重要であることが示唆された。この結果からは、家族会においても、対象者として小学生の保護者も入ってくることが今後考えられる。また、②として、松本(2018)では、ネット依存家族会で取り入れているペアレントトレーニング(PT)について、PTが効果的と考えられる事例について報告し検討した。母親にとってPTは子供の行動を見直す手がかりとなり、家族会は、自身の対応を見直す準拠枠組みとなり、家族関係も改善したことで、結果として本人の主体性も引き出されたと捉えられる事例であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、①ネット依存家族会の基礎となるネット依存に関する基礎調査および②家族会での事例研究を行った。 研究実施計画においては、ネット依存の家族会の実態を、実施機関への調査を通じて明らかにすることを盛り込んでいたものの、本年度では実施までには至らなかった。その理由として、本年度においては、対象となりうる全国の医療・行政機関で実施中のネット依存の家族が参加するグループがどの程度あるかについて、予備調査を行ったもの、実際に実施している機関がきわめて少なかったために、本調査に至らなかったことがあげられる。また、家族教室については、質問紙等の調査も予定していたが、これについても対象者の人数不足あるいは、家族会の基盤づくりを優先するために、行うことができなかった。 一方本研究では、①として、増田(2018)など、当初予定には組み込めなかったネット依存に関する基礎調査を研究分担者の力を得て行うことができた。この調査は、ネット依存家族会において重要な、対象者の選定のための基礎資料として位置づけることができたように思われる。このことで、ネット依存家族会の実施でもどのような層を対象としうるかより明確となった。同時に、実際の家族会におけるプログラムの作成においても、低年齢者への危険性をより強調することで、早期対応の重要性を示すプログラムの方向性を示しうる手がかりとなりえたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の一つである家族会の実態把握については、予備調査からは、現状としては、家族会の実施そのものが不十分である実態が明らかになった。そこで、日本の依存症臨床を長年牽引してきた国立病院機構久里浜医療センターでの調査により、具体的な方向性をさぐることが、一つの方向性と考えられた。久里浜医療センターでは、ネット依存外来を2011年に開設し、翌年から家族会も実施されている。このセンターでの家族会のプログラムは、本研究における家族会で取り入れているペアレント・トレーニングやCRAFTも取り入れており、学ぶべきものが多い内容と考えらる。そこで、今後の研究の推進方策としては、久里浜医療センターでの研修や、実施者へのインタビュー調査等を行うことで、家族会の現状について明らかにすること、また、それにより支援の方向性をより明確にすることとしたい。 ネット/ゲーム依存の領域においては、家族会の実施がまだ少ないことが分かった。そこで、アルコール依存など近隣の依存症領域等の家族支援についても改めて検討する。特に、韓国などゲーム依存への対策が進む海外において家族会等の取り組みが行われていないかも併せて検討したい。 ネット依存については、治療としては、集団での野外キャンプ等の活動も行われ既に効果も認められている。すなわち、家族支援においても、キャンプ等に家族も参加する、あるいはキャンプへの参加を促す等の間接的な支援の方向性も考えられる。このような支援方向性も検討することによって、研究の推進方策としても、家族支援の幅がより拡がりうる可能性があると考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、本年度においては、依存症家族教室への調査を実施できなかったことがあげられる。調査そのものは来年度に久里浜医療センターへの調査を予定しているが、当初予定のような全国規模での調査については見送る可能性がある。したがって、次年度の助成金としては、かわりに新たに基礎研究として実施することとなった、小中高を対象としたネット依存の基礎調査に充当することを一つの方向性とする。また、家族教室との関連では、病院内での実施に加え、キャンプ等の事業との連動も検討している。助成金についても、このキャンプ等、家族援助の幅を拡げるための使用としても検討したい。
|
Research Products
(3 results)