2018 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリアにおける支援付き意思決定の制度展開と支援モデル開発に関する基礎研究
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18K02100
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
名川 勝 筑波大学, 人間系, 講師 (60261765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木口 恵美子 鶴見大学短期大学部, 保育科, 准教授 (50511325)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 障害 / 意思決定 / 成年後見 / オーストラリア / NDIS法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究①:(1)NSW州については、(a)NSW州で行われている支援付き意思決定(Supported Decision Making:以下SDM)の研修について調べた。(b)現地調査の事前調査として、NSW州の法務省が公表している、SDMの研修資料を翻訳し内容の精査を行った。(c)日本国内の意思決定支援の議論や取り組みの動向の情報収集を継続的に行った。その結果、主に最初の2点について、次の知見を得た。→1点目について、SDMの研修を行ってきたのは、法務省管轄のパブリック・ガーディアン(公的後見)であり、SDM研修からリスク・イネイブルメント(risk enablement)の研修へと発展していた。また、連邦政府の障害者制度改革に伴い創設されたノミニー(被任命者)は、必ずしもSDMを理解しているとは限らず、後見人と変わらないという現状がある。2点目は、SDM研修では実践の枠組みとして、本人中心とストレングスが強調されていた。 (2)VIC州では、言葉によるやりとりの困難な障害者を対象とした意思決定支援にかかる取組について研究者等から聞き取りを行い、日本での適用検討についての了解を得た。また下記研究②に関する意見交換を行い、さらに議論を進めることとした。ただしNDISにおけるこのような方法の適用についてはまだ課題が多いとの意見だった。またNDISを利用する障害者の親から利用のプロセスと課題についてインタビューを行った。ここでもやはりNDIAの理解の重要性とともにノミニー(被任命者)の機能限界が指摘された。 研究②:国内の障害者生活介護事業所における支援職員の記録簿から特記事項について抽出し、気づきとpreferencesに関する検討を行っている。現在は分析中であり、主に観点の限定性や記録化に際しての不足や特徴などが見出されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究①については、所定の調査を行い、課題について整理しているところである。それらを踏まえて2019年度の調査を実施する。 研究②については、分析の途中までであり、当初の予定よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①NSW州とVIC州を中心として引き続き調査を継続することとするが、それぞれの調査においてヒアリングが不十分であった対象として、サービス提供事業者、NDIA担当者、LAC担当者などがある。それらからも多面的に情報収集し、課題の理解を深めていく。またself-managed planを行う利用者も可能ならば情報収集する。SDM研修についてはリスク・イネイブルメントについて詳しい研究者等から教授を受けるなど、関連する領域の研究者より知見を得る。また言葉によるやりとりの困難な障害者を対象とした意思決定支援のあり方については、研修プログラムの具体的な検討・協議を行う。 ②2018年度の分析を行った後、その結果に基づいてpreferencesの気づきに関する研修や記録の取り組みを生活介護事業所等の職員とともに協議し、試案を検討する。
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Causes of Carryover |
主として海外旅費・宿泊費が当初の想定よりも短期間かつ廉価で行えたことに理由がある。また謝金等は一部の計画執行までで終わったこと、翻訳・通訳謝金が当初予想よりも少ない支出に抑えられたことも理由としてあげられる。 2019~2020年度については、調査旅費の十分な期間設定なども含めて執行に努めたい。また翻訳・通訳なども含めた謝金等の執行を進めていくこととしたい。
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