2018 Fiscal Year Research-status Report
A Basic Research on Person Centered Care for the Elderly Nikkei Minorities
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18K02104
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河本 尚枝 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50403499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧田 幸文 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (00555336)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢期 / 移民 / 介護 / 福祉 / その人らしい暮らし |
Outline of Annual Research Achievements |
広島県内4市(広島市、廿日市市、東広島市、福山市)に居住する65歳以上の中国帰国者を対象に質問紙調査を行ない、その結果を中国・四国ブロック中国帰国者支援者研修会(2018年9月6日開催)で報告した。 調査対象は、広島市、廿日市市居住者は中国帰国者支援・交流センター主催の各種活動に参加する高齢中国帰国者及びその家族、東広島市居住者は中国帰国者の会会員およびその家族、福山市居住者は以前日本語教室を利用していた中国帰国者一世と二世のうち、調査協力に同意した者で、52人から回答を得た。 調査には、年齢、性別等の属性のほか、健康状態、居住形態、近隣との付き合いや地域活動への参加、生活上の楽しみ、日本語の理解力、緊急時の支援や相談相手、行政サービスの入手方法、介護保険・介護予防教室の利用の有無、住居、支援ニーズ等、高齢中国帰国者の生活実態及び支援ニーズが明らかになる質問を設定した。質問項目作成に当たって厚生労働省の中国残留邦人等実態調査および研究分担者である牧田が京都市で行った高齢住民調査の質問項目を参考にし、中国帰国者支援・交流センターで帰国者の生活支援に従事する職員の意見も取り入れた。 調査は対面で中国帰国者から話を聞き取る形式で実施した。アンケート用紙は同一内容の中国語と日本語を用意し、調査対象者が理解しやすい言語の用紙を使用した。調査の使用言語は回答者が話しやすい言語とし、中国語または日本語を使用した。 調査結果は以下の通りである。交流の範囲が家族・中国帰国者に限られる者が多く、地域活動への参加は限定的である。困った時の相談相手は家族・友人だが「話を聞いてほしい」「生活費や医療費の相談をしたい」「介護予防教室や高齢者サロンの案内」「日常生活の手伝い」等への支援・援助ニーズが大きい。高齢期を迎えて孤立傾向にあり、家族が提供できない支援へのニーズがあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では2018年度中に質問紙調査の結果を集計・分析し、その結果を踏まえてインタビュー調査を行うこととしていた。2018年度末現在、質問紙調査の再分析が終了したものの、インタビュー調査はまだ完了していない。 質問紙調査は支援機関、当事者、支援者の協力を得ることができたため、当初の想定を超える人数の高齢中国帰国者を調査することができた。一方、調査対象者が高齢であることから調査対象者の体調や通院等のスケジュールに配慮しつつ調査を行うことが必要となった。結果、調査協力者のスケジュール調整に時間がかかったことに加え、東広島市居住者の一部について帰国者団体との調整に時間がかかり調査実施が2018年8月以降になったこともあり、質問紙調査に要した期間は想定よりも長くなった。これによりインタビュー調査の開始時期に遅れが生じた。 インタビュー調査は2018年度中に開始したが、質問紙調査の結果と合わせて分析を行うにはデータ数が不足していることから2019年度も継続して行う予定である。 なお、質問紙調査の再集計を行なった理由は、2018年9月に開催された中国・四国ブロック中国帰国者支援者研修会での報告用にいったん集計していたデータと2018年8月以降に実施した調査結果を合算することが必要になったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、2019年度実施予定としていたのは、学会等での前年度研究結果の報告、台湾での生活実態調査およびインタビュー調査、支援者を対象とした調査結果報告会の実施および多文化ケアセミナーの実施の4点である。 まず、昨年度完了することができなかったインタビュー調査を継続実施し、質問紙調査の結果と合わせて分析を行う。なお、質問紙調査の結果については共同研究者の牧田が日本福祉学会中四国学会で報告する予定である。質問紙・インタビュー両調査の結果も学会で報告・論文投稿の予定である。 台湾での生活実態調査には基本的に日本国内で実施した調査用紙を使用し、インタビュー調査は日本での調査同様、質問紙調査の集計後行う予定である。現在台湾各地の日本人団体に連絡して調査協力を打診している。 支援者を対象とした調査結果報告会および多文化ケアセミナーは本研究を広く社会に還元するために開催する。調査結果報告会は中国帰国者支援・交流センターの協力を仰ぎ、広島市での開催に向けて現在協議中である。報告会の参集対象は中国帰国者の支援に関わる個人・団体・行政の関連部局の職員の他、民生委員・町内会長などコミュニティで中国帰国者に関わる人々とする予定である。多文化ケアセミナーの参集対象は、医療・介護・福祉に従事する専門職、在住外国人支援に関わる個人・団体・行政の関連部局の職員とし、高齢期の移民の生活に関心を持つ一般の人々にも公開する方向である。多文化ケアセミナー開催の詳細は共同研究者と検討中である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、調査データ入力の一部を研究代表者、共同研究者が行ったため謝金の支払額が当初予定額を下回ったためである。 次年度使用額の使用計画については、2019年度も引き続き調査を実施予定にしておりデータの入力およびインタビュー調査の文字起こし作業があることから、謝金として使用する予定である。
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