2020 Fiscal Year Research-status Report
地域における多施設・多職種協働体制強化により推進するストーマケアの標準化
Project/Area Number |
18K02106
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
澤井 照光 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50295078)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 隆 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30606463)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ストーマ関連合併症 / ストーマ造設術 / ストーマケア / 多施設協働 / 多施設 / 標準化 |
Outline of Annual Research Achievements |
長崎県の医療圏毎の中心的医療施設である長崎大学病院、諫早総合病院、長崎医療センター、および佐世保市立総合医療センターの4施設を主とするNagasaki Colorectal Oncology Group(NCOG)を組織し、その構成メンバー及び皮膚・排泄ケア認定看護師との協働によるストーマケア標準化に係る体制強化を図っている。 令和2年1月までのストーマ造設を含む下部消化管手術症例の登録数は2,193例で、ストーマ造設術を行った112例において最も高頻度にみられる合併症はスキントラブルであったが、重篤な合併症としてはこれまでに手術部位感染を14例、Outlet obstructionを含むイレウスを9例、ストーマ脱出を1例に認めていた。施設毎にストーマ造設例の平均年齢/男性比率/80歳以上高齢者の割合を比較すると、長崎大学病院:64.5±11.2歳/0.74/6.5%、諫早総合病院:66.4±6.9歳/0.75/12.5%、長崎医療センター:69.1±9.6歳/0.89/18.9%、佐世保市立総合医療センター:66.8±10.3歳/0.66/13.8%であった。 2,193例中85歳以上の大腸癌手術症例は126例で、このうち16例にストーマを造設していた。術前のC-reactive protein/albumin比が0.19以上の高値群ではストーマ造設となる率が高く(p=0.004)、術後合併症の指標になることが多変量解析により明らかとなった(HR 2.864、p=0.029)。一方、高度進行例として原発巣切除したstage Ⅳの115例の検討では、短期予後等とストーマ造設との関連は特にみられなかった。 令和2年度より、ストーマ保有者のセルフケアに影響を及ぼす長期的なストーマ関連合併症について、目標症例数を270例に設定したコホート研究を新たに開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)施設毎の患者背景や術式、合併症、専門外来、人的資源、説明に用いる資材等につき現況を明らかにした。また、定期的な研修会の実施・継続とともに、ケア困難な事例への対応について検討することによって、多施設間におけるストーマケアの標準化を進めた。 (2)多施設・多職種間で情報共有するため、令和元年度まで年に6回、計12回の研修会を開催し、継続的な情報共有と問題意識の共通認識を深化させた。令和2年度からは、対面式での研修会は中断し、リアルタイム型オンラインでの情報共有・検討会を開始した。 (3)病院・在宅・介護福祉施設等に所属する看護師92名を対象としてアンケート調査を行い、その後の研修会の実施方法・内容等についてフィードバックを行った。 (4) Nagasaki Colorectal Oncology Groupとしての活動や研究成果について、第81回日本臨床外科学会総会、第75回日本大腸肛門病学会学術集会、第75回日本消化器外科学会総会等で発表するとともに、International Journal of Colorectal Disease等への公表を行った。 (5)ストーマ保有者のセルフケアに最も影響を及ぼすと考えられる長期的なストーマ関連合併症について、その発生状況を詳細に把握するとともに、年齢、性別、BMI、ストーマの種類・高さ、手術適応、併存症、栄養状態、便の性状、ケアの自立との関連性を明らかにする目的で、令和2年9月より目標症例数を270例に設定したコホート研究を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
四半期ごとにNCOGを中心に前向きに登録されるデータに関して、様々な観点から解析を行い、ストーマ造設術に関する現況や、術後のストーマ関連合併症、ストーマケア困難事例への対応等について随時明らかにしていく。継続的な多施設・多職種間での情報共有、問題意識の共通認識に関しては、令和2年度より開始したリアルタイム型オンラインでのカンファランスにより、本研究において重視していた「face-to-face」での対話を継続する。 ストーマ保有者が抱える将来への不安として、高齢化に伴う多疾患併存(multimorbidity)の増加を反映したものか、自立困難となって以降のケアの問題が大きいことが今後の課題であると考えられる。術後早期に発生するストーマ関連合併症は、体外式装着式粘着袋型装具の安定した装着を妨げ、ストーマ管理困難性を高める。ストーマ管理困難性はストーマ周囲皮膚合併症の発生に直結し、さらにストーマ管理困難性が高まることでストーマ保有者の活動性を著しく低下させる。こうした負の連鎖を断ち切るためには、ストーマ関連合併症の要因を明らかにし、その発生を予防することが重要である。術後30日以内に発生する早期のストーマ関連合併症については最近、本邦で50施設による多施設共同研究の結果が公表されたが、施設毎の発生率は0~43.6%と施設間で大きくばらつく結果となっていた。また、ストーマ関連合併症の要因について未だ先行研究で十分には解明されていないことから、創傷治癒に関連する術前栄養状態やストーマ周囲皮膚障害との関連が疑われる便の性状、ストーマケア自立を含め解析していく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究計画時において想定されていた合同カンファランスに係る会議費については、会議実施施設のご厚意により無償提供されることとなり、プロジェクターとスクリーンについても既存の物品使用を許可していただいた。さらに、令和2年度より対面式での会議自体が実施困難になったこと、出張を伴う学会への出席も困難となりオンライン参加が主体となったことから、予定していた予算の一部について、次年度に持ち越すこととなった。 令和2年度より導入したリアルタイム型オンラインによるカンファランスに関し、多施設からの要望を基に必要となる機器等の整備・拡充を行っていきたい。また、新たに開始したコホート研究のデータ収集・解析・論文執筆等についても、持ち越しとなった予算を有効に活用していく予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 地方における手技的・学術的定型化の試み―Nagasaki Colorectal Oncology Group と Nagasaki RYOMA project―2020
Author(s)
富永哲郎,野中 隆, 久永 真, 福田明子, 竹下浩明, 濵田聖暁, 荒木政人, 福岡秀敏, 和田英雄, 黨 和夫, 田中賢治, 澤井照光, 永安 武
Organizer
第120回日本外科学会定期学術集会
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 臨床症状のない StageⅣ大腸癌における原発巣切除後の合併症予測因子に関する検討2020
Author(s)
野田恵佑,富永哲郎, 野中 隆, 久永 真, 福田明子, 吉元崇文, 白石斗士雄, 濵田聖暁, 荒木政人, 竹下浩明, 丸山圭三郎, 福岡秀敏, 和田英雄, 黨 和夫, 橋本慎太郎, 田中賢治, 澤井照光, 永安 武
Organizer
第120回日本外科学会定期学術集会