2019 Fiscal Year Research-status Report
「重要な他者」に着目した母子家庭の貧困克服プログラム開発
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18K02111
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (30582382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 典樹 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (70584465)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 孤立 / 母子家庭 / 貧困 / 就労と子育て / 子どもの居場所 / 当事者組織 / 重要な他者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は母子家庭の母と子にとって①親以外の「重要な他者」のどんな機能や要因が母と子の貧困克服にとって有効なのか、②析出された「重要な他者」の役割や機能は母と子の貧困克服において「誰が、どこで、どんな仕組み」によってその役割を担うのか、③母子家庭自立支援プログラムとして「重要な他者」モデルを政策提言することである。 母子家庭の母親への自立支援においては、多彩な就業支援のメニューがあっても、子どもに十分なケアができないため、無理してまで就労訓練メニューを受講しない、母親の第一の関心は、子どもの健全な成長と発達である。母親の職場・地域の人間関係のストレス、疲労が、子どもに影響している。母親が苦しいときは、子どもも苦しいと感じている。繊細で微妙な親子関係があり、母と子の二者関係を超える第三者の大人が、子どもの成長発達には必要であることが明示された。しかしながら、母親は就労と子育ての両立が厳しい。子育てを充実しようとすれば、就労時間が短くなる。収入を増やそうとすれば就労時間が長く、子どもとの関わりが短縮される。特に、時間給で働く母親にとっては収入増は就労時間を増やすしかない。そこで、2019年度は生活保護世帯の母子家庭と非生活保護母子世帯の就労と子育てに関してのインタビュー調査を実施した。結果は、フルタイム雇用に近い働き方をしている母親は社会資源を上手く活用している。特に、子育てのニーズは子どもの成長段階によって異なる。母親の職場環境も変化していくので、世帯のニーズに寄り添うような相談機能を持った自立支援が必要だと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生活保護母子家庭および非生活保護母子家庭の母親へのインタビュー調査の結果は、世帯に寄り添い子どもの成長や母親の環境の変化に助言や助けができる安定した他者の存在は自立支援に有効に機能している。続いて、母子家庭の母親に対して子どもの年齢別に未就学児、小学校、中学・高校の3つの段階での子育てと就労のニーズ調査を実施した。結果はちょっとした子育て支援(預かり保育)が母親のニーズでもある。子どもが病気や母親の急用時に子どもを母親の代わりにみてくれる人が誰もいないと回答する人が一定数存在した。特に、乳幼児の母親は保育所のお迎えに、仕事の都合で遅れることもあろう。そうしたとき、約1/4は誰もお願いする人はいないと回答した。そこで、ちょっとした子育て支援ができる近隣や当事者団体が担う仕組みが必要だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は追加調査を実施する。重要な他者は子どもと母親にとって社会関係を広げるきっかけになる。また、子育てをしながらの就労は子どもの成長とともに変化していく。そこで、子どもと母親がその時々に安心して相談できる第三者は母子の自立支援にとって有効だる。そこで、当事者組織の果たす役割りについて今年度は調査を実施する。特にママカフェや母子家庭の居場所事業の参与観察を実施する。
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Causes of Carryover |
昨年度の7月から10月までの間に調査が進まなかったため、2020年度に当事者の会(ママカフェや母親のミーティング)への参与観察ならびに、母子家庭就業自立支援センターの母子自立支援員や母子寡婦福祉団体の相談員へのインタビュー調査を計画している。
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