2019 Fiscal Year Research-status Report
介護サービスの地域格差是正とエリアマーケティング手法の開発―日韓瑞の比較分析―
Project/Area Number |
18K02115
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
宣 賢奎 共栄大学, 国際経営学部, 教授 (90382796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西下 彰俊 東京経済大学, 現代法学部, 教授 (80156067)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エリアマーケティング / 介護サービス供給の地域差 / 介護サービス需給要因 / 介護市場の可視化 / 介護サービスの基盤整備 / 介護保険制度 / 韓国の長期療養保険制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域における介護サービス需給の現状を可視化し、介護サービスの地域格差を明らかにするとともに、介護サービス供給の地域偏重の問題の是正と介護事業者のより戦略的な事業所経営を可能にするエリアマーケティング(商圏分析)手法を開発することを目的とする研究である。 今年度は平成30年度に収集したExcel形式のデータをMarket Analyzerへインポートし、東京圏212市区町村における介護サービスの需給状況を可視化した。研究成果として、「介護サービスのエリアマーケティング手法」と「東京圏における有料老人ホームの供給余地分析」という論文を執筆した。前者の研究においては、分析対象地域は埼玉県とし、埼玉県における訪問介護サービス、通所介護サービス、有料老人ホーム、買い物弱者と宅配・移動販売等の需給分析手法を提示した。後者の研究では、東京圏の251市区町村における有料老人ホームの新規開設の供給余地を明らかにするとともに、諸データをZスコア(指標の偏差値)化して供給余地に影響を及ぼす需要決定因子を明らかにした。研究の結果、都心部、都心から近い衛星都市、人口密集地域、交通の利便性が高い地域ほど供給余地が大きく、島嶼部、過疎地、山間部の地域ほど供給余地が小さいことが明らかになった。有料老人ホームの需要決定因子は一人当たりの課税対象所得、要介護認定者数、核家族世帯数、75歳以上高齢者人口、高齢単身世帯数、介護保険5施設・事業所数が考えられるという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主として、介護サービス需給状況の可視化のためのマッピング、分析対象地域における介護サービス需給分析と供給余地の可視化を目的とした研究を遂行した。研究実績の概要に記したように、分析対象地域である東京圏212市区町村における介護サービスの需給状況をマッピング化した。 しかし、分析対象地域における介護サービスの今後の需給予測に関する研究は、主成分分析、クラスター分析、ハフモデル分析の分析手法が確立できず、予定通り研究を進めることができなかった。また、令和2年3月に予定していた韓国における介護サービス供給の地域格差の調査はコロナウイルスの感染拡大により実施できなかった。今年度の研究課題については、令和2年度の研究において取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は令和元年度に実行できなかった介護サービスの今後の需給予測に関する研究を引き続き進める。具体的には、多変量データを統合して新たな総合指標を作り出す主成分分析、関連性の高い統計指標でグルーピングするクラスター分析とハフモデル(Huff Model)分析の分析手法の確立を目指す。 また韓国における介護サービスの供給状況と地域格差の検証を行う。具体的には、韓国のすべての自治体の介護サービスの供給状況を調べ、韓国における介護サービス供給の地域格差を多面的に明らかにする。コロナウイルスの感染拡大により実施できなかった現地調査を通して介護事業所の立地状況(韓国では都市部の雑居ビルに介護事業所を開設している場合が多く、住所地だけでは立地状況の把握が困難)についても精査する。現地調査は、日本における介護サービスのエリアマーケティング手法の韓国への適用可能性を探ることに主眼をおいて行う。スウェーデンにおける介護サービスの供給状況と地域格差の検証も行う予定であるが、これについては研究分担者の西下彰俊教授が行う。 令和2年度は本研究の最終年度であることを踏まえ、韓国とスウェーデンの両国において国際介護政策セミナー・シンポジウム等を開催し、介護サービスの供給状況と基盤整備のためのマクロ的視点でのエリアマーケティングの有効性を検証するとともに、持続可能な長寿社会に向けた介護サービスの基盤整備に関する提言と研究報告を行う予定である。このセミナー等は、韓国とスウェーデンの研究機関及び研究協力者らによる日本への示唆を得ることをも目的としたものであるが、コロナウイルスの感染拡大が収束しない場合は、中止せざるを得ない状況になると思われる。その場合は、論文の公表を通して研究成果を報告したい。
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Causes of Carryover |
(理由)コロナウイルスの感染拡大により、予定していた韓国における介護サービス供給の地域格差の調査は実施できなかったことに加え、研究補助費(資料収集・データ入力等の補助)および会議費(会場借用・飲料等)の支出が予定より少額であったためである。
(使用計画)調査・研究旅費、研究打ち合わせ旅費、研究補助費、会議費などに使用する予定である。
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Research Products
(8 results)