2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on factors that enhance the community-focused mental health services in US and common wealth countries
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18K02121
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
木村 真理子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (00266462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱施設化政策 / 州立精神病院 / 地域ケア / 当事者活動 / リカバリー / SMI / 規模縮小 / 地域移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神病院の設置主体は日本と英連邦圏では異なっている。英連邦圏で重度の精神障害者(SMI)の治療に対応してきた州立精神病院は、連邦政府の政策のもと1970年代以降規模縮小や閉鎖の政策が進展した。英連邦圏においては医療と地域サービス(日本では社会福祉の管轄)とが連続性をなす。民間精神病院が8割を占める日本の精神医療制において、本研究の主題である脱施設化促進要因の探求は、日本の地域移行研究にどのような示唆を与えることができるであろうか。 日本では、「地域移行」という用語は登場するが、それは、病院の縮小や閉鎖と必ずしも同義ではない。近年、精神病院の病床の転用などで、日本の精神病院の入院期間や対象の変容を目指す政策が推進されてきた。地域サービスの点からみると、障害者総合福祉法等の法制度の下、障害をもつ人々の生活を支える仕組みと範疇が大きく変化した。日本の場合には障害の特性で利用を限定するよりもむしろ障害による差別化をなくして種々の障害特性を持つ利用者を受け入れる方向に地域サービスの枠という点では進展した。その結果、それまで精神障害のある人々に支援を焦点化してきた地域の生活支援や就労支援機関は、サービスを提供する側が多様な障害に適合させることを余儀なくされた。地域の相談機関も同様に、多種の障害特性に対応した相談や支援に対応することを法制度上求められている。 英連邦圏の精神保健制度は、精神医療が病院から地域まで一連の流れ(連続性)を構成しており、地域の側に移行するにしたがって、医療は人の生活を支える部分に限定され、それ以外のサービスが人々の生活の中心を構成する要素となっている。日本は、依然として、医療と地域のサービスは制度の上で区別されており、時にはこれは障壁ともなる。一方、地域は、社会福祉制度の仕組みや概念が構成要素の中心をなしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進展度合いを、やや遅れているとした。それは、2020年度で研究を完了することができなかったからである。コロナ禍における研究上の制約はあったが、以下の方法でこれまでの研究成果の集約を試みた。これまで収集した資料を基に、研究の問いに即して成果をまとめる作業に集中した。現在も研究成果をまとめる途上にある。
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Strategy for Future Research Activity |
英連邦圏の脱施設化政策は、大部分の国々で2000年頃までに完了を見た。完了というのは、州立精神病院の機能を限定し、地域で可能な限り生活を維持し、必要な精神医療を付加する仕組みに転換している。こうした生活様式に移行した現在、自治体(州)の政策も変容している。その中心が、かつて収容中心の治療の対象とされた重度の精神病の人々(SMI)であったが、現在は、この対象に特化した精神医療モデルを脱却し、広く地域のメンタルヘルスの向上に政策の焦点が変化したという点が大変特徴的である。 日本は、民間の精神病院が8割を占めており、2000年以降も、長期在院日数のドラスティックな変化は認められない。一方、地域には多様なメンタルヘルスのニーズが顕在化しており、また多様な活動が誕生している。メンタルヘルスニーズの多様性ということばで表現されるのがよいだろうか。疾病と医療的対応とは対照的に、社会福祉を含む多様な対応を求められるこうした地域の状況に対しては、政策やサービスの進展過程や制度の違いはあるものの、メンタルヘルスに特化した英連邦圏の今日に至る政策と当事者の求める多様な支援サービスへの予算支出を含め、専門職の活動内容と機能に関する情報収集と分析は、日本と英連邦圏の制度の対比を示し、双方にとって示唆を与えてくれる。2021年度は現地調査もしくはZoom等による聞き取りを含めて、これまで収集した研究データに統合し、研究成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、現地調査を実施することができず、研究予算を次年度に繰り越すこととしたため。
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