2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on factors that enhance the community-focused mental health services in US and common wealth countries
Project/Area Number |
18K02121
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
木村 真理子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (00266462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域精神保健 / 生きられた経験 / リカバリー / 地域支援システム / 包括的地域ケアシステム / グローバリゼーション / コミュニティメンタルヘルスフレームワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル時代のコミュニティメンタルヘルスの課題:2020年代を迎え、グローバル化や激化する人口移動は、人々のメンタルヘルスへの影響を注視する事態を生じさせている。Berry (1997)は、国の多文化政策が移住者のメンタルヘルスに影響を及ぼすと述べている。このことは、政策やサービスの整備とメンタルヘルスの関係を物語る。 本研究は、精神障害のある人々を地域で支えるシステムに焦点を当ててきた。1960年代から着手した欧米諸国の脱施設化政策は、2000年代までに多くの先進諸国で包括的ケアシステムが導入整備され、サービスのコーディネーションや人々のニーズに呼応する支援の度合いは幅があるが、より均質なサービスの担保が専門家や生きられた経験を有する当事者組織の声としてサービスの仕組みに反映されてきた。 今日特に、地域のグローカル同行と共に、移住者のメンタルヘルスも、地域精神保健の構成要素に位置づけられている。移住者が到着直後に利用する定住サービスに加え、生活を支える地域のサービスの連続性が地域精神保健を支える要素として、地域支援の連続性を担保する仕組みが求められている(McKenzie, et al., 2016)。 グローバルなヘルスケアが必要とされる文脈をヨーロッパのグローバル化に位置づけた研究(WH、2018;WHO, 2017)では、グローバル化の急激な進展と地域で求められる重要なサービスの動向として、移住者自らがサービスの企画者、運営者となる役割が語られている。移住のメンタルヘルスの経験は、受入国による計画だけでは、総合性や包括性、連続性を担保することは困難で、生きられた経験を有する当事者が、サービス設計に携わることで、より親和性を持ち、コミュニティに即したサービスを設計することが可能となることを物語る。地域精神保健サービスも同様のことが叫ばれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で現地を訪問するなどの研究は中止となったものの、準歴史的研究および先進諸国(特に英連邦圏)は、精神保健サービスや関連データの管理および公開が充実しており、現地調査を経ることがなくても研究を進展させることが可能となっている。また、本研究を長期にわたって行ってきた経緯から、これまでの当該分野の研究に新たな動向を加えること、それによって変化を生じるメンタルヘルスの仕組みについての仮説を検討することも可能となっている。以上が研究の進展状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策:カナダのコミュニティメンタルヘルスシステムの構築を例にとる。BC州は、冒頭の研究の成果で触れた生きられた経験を持つ当事者が自ら運営する住宅の建設にMPA(Mental Patients’Association)によりカナダの他のどの州よりも早く着手し世界の先駆例となった。今日まで、地域の包括的システムと共存し、当事者による住宅およびそれ以外の活動が共存して進展を見ている。生きられた経験をコミュニティメンタルヘルスシステムに反映させることが、今後のシステムの在り方に決定的な影響を及ぼすことになる。Devon地区でも、コミュニティメンタルヘルスシステムに当事者の生きられた経験をいかに反映させるかが、システムの設計において重要な要素であると位置づけている。こうした要素を、英連邦圏で着実に探ってゆきたい。(https://www.dpt.nhs.uk/resources/community-mental-health-framework/what-is-the-community-mental-health-framework)
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Causes of Carryover |
コロナ禍により現地調査が実施できなかったことにより、次年度使用が生じた。
収集データの加工や作業に用いるパーソナルコンピュータおよび関連機器の購入を予定している。また、関連情報収集をZoom等で行い、謝金を支払う可能性がある。関連書籍の購入も予定している。
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