2019 Fiscal Year Research-status Report
後発福祉国家・韓国のベーシックインカム構想に関する政策論的研究
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18K02123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 成垣 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20451875)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベーシックインカム / 福祉国家 / 韓国 / アジア / 脱キャッチアップ / コロナ危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,後発福祉国家としての韓国におけるベーシックインカム(Basic Income)構想に着目して、第1に、韓国で近年活発に展開されているベーシックインカム構想の政治経済社会的背景およびその実際の展開過程と中身を明らかにすること,第2に、諸外国におけるBI構想と比較しながら、韓国におけるベーシックインカム構想の国際比較的な特徴とその理論的・実践的意味を明らかにすること,第3に以上をふまえて、後発福祉国家としての韓国におけるベーシックインカム構想の経験が、日本や西欧における先発福祉国家の行き詰まりとその打開策の模索に対して示す政策的インプリケーションを明らかにすることを課題としている。
本年度は,韓国に加え,後発福祉国家といえる他のアジア諸国・地域についての実態調査を行った。その際,ベーシックインカムに限らず,それを含む新しい制度・政策の展開に着目し,それを「後発国における新しい福祉国家化のパターン」あるいは「脱キャッチアップ型福祉国家化のパターン」と捉えつつ,各国・地域の共通点と相違点を明らかにすることを試みた。
韓国を含むアジア諸国・地域についての実態調査とかかわって,本年度は重要な出来事があった。2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりである。それによる経済への影響,とくに雇用情勢の悪化に対応するためにアジア諸国・地域のみならず,欧米諸国を含む多くの国・地域ではベーシックインカム的な性格をもつ給付金が実施されるようになった。一回性の給付で終わったケースもあれば,その延長あるいは制度化を試みるケースもある。本年度は,この新しい動きに関する情報を集めつつ,各国・地域にみられる共通点と相違点,そしてそれのもつ理論的および実践的意味を明らかにすることを課題とした。この課題については2020年度にひきつづき取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,おおむね順調に進展している。ただし,今年度の新しい出来事,すなわち新型コロナウォルスの拡大のなかでにみられた新しい制度・政策の展開についての調査は不十分であった。感染症拡大の状況による現地調査や資料収集の制約があったためである。この点については,来年度に本格的に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように,2019年末に始まった新型コロナウイルスの拡大によるさまざまな危機的状況(コロナ危機)のなかで,韓国を含む多くの国々では,ベーシックインカム的な性格をもつ新しい制度・政策の展開がみられるようになっている。その新しい制度・政策の展開に関しては,本研究が当初想定していなかったものであるものの,本研究の課題と直接かかわるものである。今年度は,コロナ危機の真っ只中で資料収集や現地調査に大きな制約があったため,その新しい制度・政策の展開について十分な調査を行うことができなかった。来年度は,可能なかぎり現地調査の実施を試みつつ,現地調査が十分に行えない状況に備えて,オンラインツールを活用した現地の関係者へのヒアリング調査を行うことを予定している。
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