2018 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における福祉NGOのネットワーク形成に関する研究
Project/Area Number |
18K02126
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
横浜 勇樹 関東学院大学, 教育学部, 准教授 (30369615)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シンガポール / 華僑 / 華人 / ネットワーク / 社会関係資本 / ソーシャルキャピタル / 中華圏 / ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中華圏の福祉NGOの状況について把握するために、シンガポールと香港をフィールドとして調査をおこなった。 シンガポールにおいては、Seniors activity centerやCare home for the agedなどの多くのNGOが高齢者施設や障害者施設の運営に携わっており、地域住民のニーズに応じてサービスを展開していることが明らかになった。そしてそのサービス提供エリアは政府により地域別に分かれており、NGOが独自に地域福祉サービスを展開するのではなく、主に政府の主導により地域ごとに細分化された運営がなされていることが明らかになった。そのため、今後、シンガポール政府の福祉政策とNGOの関係について調べる必要があった。また、シンガポールでは、華僑会館が各地に設置されており、この活動についても把握することに努めた。現在のところ、地域の福祉サービスの提供をおこなっている会館は多くはなく、同郷、同氏、中華圏の社会とのネットワークを大切にした文化的事業や、後世への継承活動を主なものとしていることが明らかになった。一方、この華僑会館のつながりは、中国大陸や台湾、日本など広範にわたっていることから、この華僑会館の活動を一つの切り口として、今後の本研究を深めていきたい。 香港においては、政府の福祉事業の大部分をNGOが独自のサービス提供組織として、になっていることが明らかになった。大小のNGOを含め非常に多くのNGOが高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉などの各福祉サービスを提供していた。NGOが小学校など学校運営をしていることからも、NGOが政府機関の一部として役割を担っていることを示している。また、NGOのソーシャルワーカーの位置づけは、わが国のそれとは大きく異なり、社会的地位など、今後の香港の社会福祉、社会政策を考えるために重要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、中華圏の福祉NGOの活動とそのネットワークについて現地調査と文献調査をおこなっている。今年度は、シンガポールと香港のNGOの活動について、現地のNGOを主宰する方々に活動内容や歴史性などについて多くの話を聞くことができた。そのため今年度の活動は、今後、多地域で実施する実際の現地のサービス利用者へのインタビューやアンケート調査の基盤づくりとして位置付けた。海外での調査活動は現地における研究協力者のアドバイスや繋がりを抜きにしては実現することが難しい。その点は、当初の研究計画にあった研究協力者との連携を事前に綿密におこなっていたことから、今後の活動はより充実した調査活動を実施することが可能と考えている。また、そのためには、今後も研究協力者と調査地のフィールドとの関係をより良いものにしていく必要があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究においてシンガポールと香港のフィールドワークの基盤ができたことから、今後の研究活動ではこの現地における福祉サービス利用者へのインタビューやアンケート調査を具体的に実施していく。同時に、中国大陸、台湾の研究協力者に福祉NGOの調査フィールドについて綿密に連携をとりながら、調査実施のための福祉NGOの選定をおこなっていく予定であり、その活動に取り組んでいる。 研究計画では4年間の研究において、毎年、シンガポール、香港、台湾、中国とそれぞれのフィールドを調査するものであるが、実際の研究活動においては、調査地との調整が必要であるため、それぞれの調査フィールドを同時並行に連絡をとりつつ、調査をおこなっていく必要がある。そのため、調査においては、まずはそれぞれのフィールドにおいて基本的なインタビューを行うことを第一と考えている。そして、アジア圏でおこなわれる学会に多く参加することで、中華圏の福祉政策、福祉NGOの情報を得て、さらにその情報をもとに本研究活動を発展させていく予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は、研究調査地であるシンガポールと香港において、研究協力者とフィールドの選定と今後インタビューやアンケート本調査を実施するための、基礎調査段階と位置付けた。その基礎的成果を現段階でまとめているところであり、当初予定した研究成果の発表の場である国際学会に参加することを見送り、そのための余剰金が発生した。しかし、次年度はすでに研究成果について国際学会で発表することが決まっているため、この余剰金などを有効活用して学会に参加して、多くの参加者と議論を交わしていきたいと考えている。
|