2019 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における福祉NGOのネットワーク形成に関する研究
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18K02126
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
横浜 勇樹 関東学院大学, 教育学部, 准教授 (30369615)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シンガポール / 華僑会館 / 宗郷会館 / 宗親会館 / 互助活動 / エスニシティ / アイデンティティ / 中華圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は華僑・華人が歴史的に多く生活をしているシンガポールの福祉的活動に焦点をあて、おもに華僑会館の互助活動を中心に文献、現地調査をおこなった。文献による研究では、シンガポールにおける華僑会館の歴史と互助活動の内容について明らかにした。その結果、18世紀の中国から移民してきた華僑は東南アジアにおいて、会館という出身地ごとの互助組織を形成し、そこで生活支援や仕事の斡旋、故郷とのつながりの形成などを、広くおこなっていたことが明らかになった。それらの会館には「福建会館」「潮州会館」「広東会館」「海南会館」「客家会館」「福州会館」が広く活動をおこなっており、例えば、語学教室や移民の支援活動などをおこない、とても活発に活動をしていることがわかった。そして、会館の活動はシンガポールにおいて、中国の現地とのネットワークも強く形成しており、シンガポールの同郷の中華系の移民の心の拠り所となっていることが明らかになった。一方、シンガポールでの現地調査は、これらの会館の活動の状況についておこなった。その結果は、現在の会館の活動は経済や社会の発展と変化にともなって、これまで会館が担っていた互助活動をおこなっているところは、だんだんと少なくなっていることが明らかになった。しかし、中国とのつながりや、世界各地に存在する他の会館や同郷のネットワークを堅持しながら活動していることが明らかになった。 また、近年の新移民の生活支援をおこなう会館も出現しており、会館は現代においても華僑・華人の拠り所として活動していることが明らかになった。中華系の若い世代が会館の活動に関心を持たなくなっていると言う課題が明らかになり、今後の会館の活動の課題になっていることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、中華圏の福祉活動の状況を考えるために、シンガポールという地域を限定し、そこにおける互助組織の活動について文献および現地調査をおこなった。その結果、中華圏の福祉的な民間活動において、会館の果たしてきた役割が大きいことを明らかにすることができた。そして、これは今年度、シンガポールにおいて現地調査の結果でも得ることができた成果でもあった。今後は中華圏の福祉活動を考えるための資料として、活用していくことができるものである。同時に今年度は研究成果を国際学会において発表することができた。学会においては、新たに中華系の研究者と交流を深めることができた。これにより、本研究をより発展させる機会を得たのと同時に、今後、それらの研究者と共同研究を検討する機会にもなり大変有意義な機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究成果である中華圏に存在する宗郷会館、同郷会館の活動がどのように、中華圏の国や地域で福祉的な活動をおこなっているかを文献、ならびに現地調査にて明らかにしていく予定である。調査地は、華僑・華人が多く生活しているマレーシア、香港、台湾、ハワイを念頭においている。 調査は、基本的に現地において聞き取り調査をおこなうことを基本としているが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大により、調査が困難なことが予想されるため、その際は現地の研究協力者とインターネットなどを通じて研究を進めると同時に、次年度以降の現地調査も念頭におきながら、文献や資料などで調査内容を検討し、調査でじゅうぶんな成果をあげることができるよう念入りに準備をおこなう。
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Causes of Carryover |
今年度は、シンガポールにおける現地調査と国際学会に関係する費用を中心に、経費の支出があった。また、当該年度の調査計画では、当初、香港における現地調査について年明けの2020年2月~3月に実施しようと計画をしていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により渡航をすることが困難になったため、この調査のために必要な費用の余剰が生じた。 次年度は、この余剰金を使用して再度、香港での現地調査を実施する予定で現在、その準備をおこなっている。しかしながら、調査活動においては、新型コロナウイルスの感染拡大の状況をじゅうぶんに考慮する必要があるため、調査地における安全の確保を最優先にして調査を実施することを念頭においている。 現在は、調査地である香港の研究協力者とインターネットなどを活用して調査の進捗状況を逐一確認しながら準備をおこなっている状況である。次年度、可能な限り調査を実施する予定で準備にあたっている。
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