2021 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における福祉NGOのネットワーク形成に関する研究
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18K02126
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
横浜 勇樹 関東学院大学, 教育学部, 准教授 (30369615)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生 / シングリッシュ / 華僑会館 / 互助組織 / コミュニティ政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、中華系のコミュニティにおける福祉NGOのネットワークを考えるために、華僑、華人が多く生活するシンガポールの華人コミュニティの福祉環境と華人のアイデンティティについて研究を深めた。シンガポールの福祉環境を考える分野として子ども福祉を取り上げた。シンガポールでは、わが国同様に子ども福祉が重要視されており、特に児童虐待の問題は深刻な状況である。シンガポール政府は社会家庭開発省(Ministry of Social and Family Development(MSF)がさまざまな児童・青少年の保護とケア、家庭への支援をおこなっており、児童を保護する法律:Children And Young Persons Act(CYPA)に基づいてコミュニティベースで、虐待防止のサービスを実施していることが明らかになった。 一方、シンガポール華人のアイデンティティについては、シンガポール国立大学の卒業生を対象におこなった調査を分析した。その結果、若い華人たちは、自分たちを特に中華系と意識することは少なくなっており、英語や中国語、あるいはシングリッシュを上手に使い分けながら日常生活を送っていることが明らかになった。シンガポール華人のアイデンティティは、政府による言語政策の影響もあると考えられるが、とくに華人系だからといって、華僑会館のイベントに積極的に参加をしているわけでもないため、世代を経るにしたがって、華人アイデンティティについては、揺らいでいることが明らかになった。その一方で、華僑会館は、若い世代を引き付けるイベントや他国の同郷会館とのつながりを模索するなど新たな動きも発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度も新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、台湾、香港における現地調査をすることが困難であった。また、現地においても研究協力者が感染防止のために、組織に出向する機会が激減したため、オンラインによる打ち合わせも困難な状況が続いている。その一方で、2022年3月より徐々にではあるが、人々の移動が緩和されているので、2022年度にはオンラインでの調査と並行して、現地調査の計画をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査地における新型コロナウイルス感染症の状況に注視しながら、シンガポール、香港、台湾の華僑会館と福祉NGOの調査を行っていく予定である。 すでにシンガポールの華僑会館と連携をとっており、まずは、オンラインで状況を確認しつつ、平行して現地調査の実施時期を考えている。同様に、台湾、香港についても、研究協力者の協力を得ながら、福祉NGOについてオンラインと現地調査をすすめるべく調整をおこなっているところである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらないため、海外現地の調査活動にともなう、旅費、宿泊費、謝金などに余剰が生じた。また、国際学会についても感染症拡大により渡航ができずその費用が余剰となった。次年度においては、感染症の状況を鑑みながら、できる限りシンガポール、台湾、香港での現地調査にこれらの余剰費用を使用して研究を進める計画である。さらに、現地において、華僑、華人、福祉NGOの書籍類を購入する予定である。
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