2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on psychosocial support for middle-aged and elderly cancer patients who live alone and have no family to support their lives with medical treatment
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18K02128
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
久村 和穂 (石川和穂) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00326993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 里美 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (20436885)
棟居 徳子 金沢大学, 法学系, 教授 (50449526)
元雄 良治 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80210095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 進行がん / がん患者 / 独居 / 心理社会的問題 / 社会的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年日本を含め先進諸国では中高年の独居世帯が増加しているが、家族介護者のいない独居の進行がん患者への心理社会的支援に関する実証的な研究は国内外を問わず極めて少ない。本研究は、独居等で療養生活を支える家族のいない中高年の進行がん患者について、①どのような心理社会的問題を経験し、どのように対処しているのか、②このような患者が地域社会の中で最期まで尊厳を持って安心・安全に暮らしていくためには、どのような心理社会的支援が必要かを明らかにすることを目的としている。 当該年度は2年目にあたり、昨年度に引き続き独居の進行がん患者の経験する心理社会的問題の実態と満たされない支援ニーズを把握するためのインタビュー調査を実施した。調査対象者は、①40歳以上の独居の進行がん患者、②独居の進行がん患者の心理社会的支援に携わる医療福祉従事者・有識者等である。①の対象者については、がん治療のために金沢医科大学病院集学的がん治療センターを受診した者と常設の院外がん患者サロンの利用者を含む計15名、②の対象者については、在宅医、訪問看護師、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、ヘルパー、社会保険労務士を含む9名から協力を得た。 質的データ解析ソフトMAXQDAによる逐語録の分析を行った結果、独居であるために進行がん患者が経験している心理社会的問題は以下の内容に分類された。1. 就労・経済的問題、2. 緊急時の対応、3. 日常生活上の問題(例:移動、食事、住環境整備、事務手続)、4. 家族等への負担、5. 孤独・相談相手の不在、6. 治療・療養の場の選択に関する問題、7. 社会資源不足、8. 葬儀・死後事務に関する問題。また、これらの心理社会的問題について患者と支援者の間に違いがあることが示唆され、更なるデータの収集と分析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビュー調査の実施にあたり、金沢医科大学および石川県済生会金沢病院倫理審査委員会で承認を得た(承認番号:No. I350、平成30年度申請第20号)。調査対象者は、①40歳以上の独居の進行がん患者約20名、②独居がん患者の心理社会的問題に精通するキー・インフォーマントとして患者の生活支援に携わる医療福祉従事者等約20名である。半構造化インタビューを行い、インタビューの内容は対象者からの許可を得てICレコーダーで録音した後、逐語録を作成した。 患者対象インタビューについては、金沢医科大学病院集学的がん治療センターと石川県がん安心生活サポートハウスの2か所で、性別および年齢群(中年群、高齢群)の比率を1:1として調査対象となる患者の連続サンプリングを実施し、現在までに患者15名(男性6名、中年群8名)のインタビュー・データを収集した。 患者対象インタビューのデータから抽出された支援者や社会制度・サービス等に精通した人物を支援者対象インタビューの対象者とした。現在までに在宅医、訪問看護師、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、ヘルパー、社会保険労務士を含む9名に個別またはグループ・インタビュー調査を実施した。 これらのインタビュー・データの分析は、質的データ解析ソフトMAXQDA2018を用いて実施中である。分析内容としては、独居進行がん患者が経験した心理社会的問題や支援ニーズだけではなく、問題解決のために患者が活用した社会資源やコーピング、支援者側が心理社会的支援にあたって行っている工夫や配慮等の内容を含めて解析している。なお、独居進行がん患者15名のインタビュー・データについては分析結果をまとめ、緩和・支持・心のケア合同学術大会(8月10-11日開催)にて報告する(採択済み)。
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Strategy for Future Research Activity |
患者および支援者対象インタビュー調査を継続し、新たに患者5名程、支援者10名程度からのインタビュー・データを収集し、分析する。当面インタビュー調査は、調査協力者のCOIVD-19の感染防止と安全確保のため、可能な限り電話やWEBを用いた方法で実施する。 また、データ分析、および、インタビュー対象者となる支援者の選定についても、分担研究者と可能な限りメールまたはWEB会議等で協議する予定である。インタビュー対象者の選定方法については、支援者の職種・専門分野・属性等が偏らないよう、分担研究者および研究協力者間で協議して決定する。現在までの患者インタビューの内容から、独居の中高年進行・再発がん患者の心理社会的支援に携わった経験のある司法・行政関係者、民間サービス事業者、患者支援団体関係者等が含まれることが想定される。 インタビュー・データの分析結果から独居の中高年がん患者に特有の心理社会的問題や支援ニーズの特徴を推定し、インターネットによる量的調査のための調査項目の作成と調査の設計を行う。2021年度のインターネット調査の実施に向けて本学倫理審査委員会での承認を得る。
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Causes of Carryover |
インタビュー・データの逐語録を計画時よりも安価な価格で提供する業者に依頼することで、研究費の支出を押さえることができた。また、COVID-19の影響により、対面でのインタビュー調査の実施、および、研究班会議の開催を控えたため、支出が計画時よりも少なくなった。 今後は電話やWEBのシステムを利用したインタビュー調査や研究班会議を積極的に実施する予定である。また、最終年度に実施するインターネット調査の実施に向けて準備(予算を含めた調査設計)を進めていく。
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Research Products
(2 results)