2020 Fiscal Year Research-status Report
次社会における精神保健医療福祉システムの構築~市民社会とまちなかケアの提案~
Project/Area Number |
18K02133
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
緒方 由紀 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (50319480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 正幸 佛教大学, 社会福祉学部, 名誉教授 (00268054)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EUCOMS / 臨床倫理 / 精神保健医療福祉システム / 協働的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
現代社会が抱える排除と包摂といった課題に対し、精神障害者は市民としてあたりまえに生きることにおいていまだ制限の中にあると言えよう。そこで日本の精神保健医療福祉の特異性に着目しその実態を法制度かつ実証的に明らかにすることが本研究の目的である。具体的には、次社会に必要となる暮らしの場所とその質を問う「まちなかケア」の提案であり、1.制度政策と公的責任、2.医療福祉サービスの提供体制、3.後期近代における新たな価値、文化としての多様性や共生、包摂の方法、以上3点を軸としこの間検討を行ってきた。 本研究3年目の2020年度は、精神保健医療福祉システムに関与する専門職の課題に焦点をあて検証を試みた。これからの社会システムにおいて、専門職はどのような社会的要請を受けることになるのか。その一つに、地域のなかにある複雑かつ重層化する生活問題に対し、求められているのは多職種による協働的アプローチである。言い換えるとソーシャルワークだけで問題が解決しないという臨床的現実である。二つめは、多様な当事者の存在を専門職間で受け止めるだけでは介入の点からも十分ではなく、当事者の「生きる」時間に専門職がいかなる方法で参画するのかという臨床的枠組みの見直しが求められている点にある。 これら臨床的課題を「専門知と臨床倫理」の概念をもとに検討を行い、当事者のリカバリーとその権利を見据えて議論が行われること、そしてその延長線上に専門職の臨床的役割と倫理を共通項として位置づけていくことが重要であるとの結論にいたった。続いて、欧州のEUCOMS Network (European Community Mental health Service providers)におけるミーティングや包括的組織間の相互学習とサポート、政策と実践の連携強化といった方策について、文献を通して整理を行い、本研究の到達点に通じるものであることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、保健医療福祉の実践ならびに法的実務の側面から研究交流を行う「まちなか研究会」を計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、オンラインでの実施を試みたものの、参加者の業務(医療、福祉、教育)がコロナ禍での日常対応に追われ実現できなかった。結果、少人数での研究会を数回開催したが、研究的課題の確認と最終年度に向けての確認で終わってしまった。 年間をとおして文献研究を中心にとりくんだが、電子リソースや学術情報データベースを活用しつつも、従来利用できていた学外図書館からの文献貸し出しが休止となるなど、資料の入手制限も遅れの要因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、転換期としての後期近代における市民社会論・市民哲学としての議論を海外の動向にも着目し学際的にすすめていく。 なお、前年度から継続テーマであったケアにかかる記録やカンファレンスの実証的課題の明確化については、リモート等による研究会の開催を基本としつつ、代替方法として研究代表者が研究機関等で行われるカンファレンスや関連学会等への参加の機会をもって(守秘義務等、倫理上の配慮を遵守したうえで)検討を行うことも考えていきたい。 いずれにせよ2021年度も制約の多い1年となることが予想されるが、分担研究者、研究協力者らと研究のまとめや成果報告の場を確保し、本研究の総括を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、オンライン研究会へと変更を試みたが、参加者の業務の関係から日程調整が難しく、謝金等の予算執行ができず使用額の大幅な変更となった。 2021年度は最終年度であり、研究分担者、研究協力者らとのオンライン等によりの研究交流の機会を設けると同時に、ベルギー、オランダ等新たな海外文献資料の翻訳など学際的知見を得ることを計画している。
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