2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Reconstruction of Mental Health and Social Welfare in Next Society
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18K02133
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
緒方 由紀 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (50319480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 正幸 佛教大学, 社会福祉学部, 名誉教授 (00268054)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多元的循環型社会 / まちなかケア / コミュニティ・コモンズ / 精神障害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の精神保健医療福祉政策に着目しつつ、次なる社会を構築するためのしくみや要素を提示することである。最終年度は①まちなかケアの実践フィールドとして現地自治体および社会福祉協議会職員らの協力により奄美大島北部及び南部での調査、②これまでの成果をまとめるため分担ならびに研究協力者らと研究会を数回実施した。研究会では次なる社会を「多元的循環型社会」と位置付け、学際的な議論を重ねてきた。 まず調査をとおして、地域規模について、既存のコミュニティ規模や機能が変化していく(多くは縮小傾向)中で、人口規模・予算に応じた「多元的循環型」への転換(もしくは、既に存在している場合にはその維持)を如何に図っていくのか、そのために人と資金をどう動かすのか、検討すべき課題があることが明確になったと考える。ミクロ・メゾ・マクロレベルでの多元的循環のありように関する要素抽出から、モデル社会を想定し人・資金の動きを検討することが、次社会の全体像を描くために必要である。 さらに昨今、地域共生社会を基軸に、長期入院者の課題を高齢者の地域包括ケアシステムの仕組みへと転換を図っている。しかし増え続ける介護費用抑制や介護保険制度そのものを維持するための高齢者分野と違い、公的責任や実施主体の曖昧さ、地域差の問題は残存している。また精神科病院システムへの依存は、地域での困りごとが可視化されることがないまま地域の経験不足を引き起こし、まちの暮らしを阻害するバリアや困難はそのままという悪循環に陥っている。制度施策、政治力、官僚主義と市場原理による政策決定を打破するための方策、人口規模や地理的特性、文化的環境によるコミュニティを基本としたケアのあり方、当事者の発言等、予算と人を動かしていくしくみがあらためて課題であることを確認した。なかでも地域のコモンズのありようが今後の形成プロセスにおいても不可欠である。
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