2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02134
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大村 和正 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30571393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
居神 浩 神戸国際大学, 経済学部, 教授 (70289057)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アクティブ・インクルージョン / 社会的包摂 / 若者支援 / 「承認」 / 当事者の自主性 / 当事者の変容 / 公民の連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年9月から2019年3月までに科研メンバーによる研究会(アクティブ・インクルージョン研究会)を5回程度実施。研究代表者の大村と研究分担者の居神は調査対象であるフリースクール「学びの森」が実施している定例の研究会や公開フォーラム等に参加。研究代表者の天野の調査対象である若者支援を行っている民間団体ハローライフの若者支援事業を数回程度観察した。 上記研究会では、主として全国若者サポステのアンケート調査の実施を検討した。アンケートの実施には調査・質問項目やその文章等を注意深く検討する必要があり、この分野の先行研究も参照しつつ、慎重に検討している。この過程で、サポステ調査も含め、近年、注目すべき研究成果を出している井上慧真氏(帝京大学助教)を研究会の講師にお招きして、報告や情報・意見交換を行った。サポステのアンケート調査はまだ内容を検討中であるが、上記の作業を通じて、サポステの調査に向けて貴重な情報や知見を得ることができた。上記の研究会では、2015~2017年度科研(「『能動的参加』としてのアクティブ・インクルージョン」)の調査・研究を振り返り、今後のこの科研での調査・研究の進め方も検討した。 「学びの森」関連の研究会・公開フォーラム等への参加を通じて、不登校の若者の声を聴いたり、若者支援現場の関係者と意見交換することで、「承認」型の社会的包摂であるアクティブ・インクルージョンに関する貴重な知見を得ることができた。天野が観察しているハローライフの若者支援活動でも貴重な知見を得ることができている。ハローライフが日本センチュリー交響楽団と連携して実施している音楽活動を通じた若者支援事業である「The Work」を、以前の科研と同様に調査を継続している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全国サポステ・アンケート調査の質問項目やその文面の検討に少し時間をかけている。拙速な調査項目や文面では良い成果を得ることは困難と思われるので、先行研究の検討や精査も含め、アンケート調査項目や文面の作成は、慎重に少し時間をかけて行いたい。 2015~2017年度の科研で実施した大阪、京都、神戸各地のサポステ調査で、就労者数の基準等では評価できない、サポステの若者支援の特徴がある程度明らかになった。すなわち当事者の自主性や自主的な変容、それを促進する当事者間の相互の働きかけによるピア効果等の要素であり、民間団体の支援者が行政や地域の関連するアクターと連携して、上記のことを促進する各地のサポステ特有の事業のあり方である。これまでの調査で得た上記の成果を踏まえて、これらの特色が全国のサポステでどの程度認めることができるのかを定量的に検討するために、全国サポステのアンケート調査の実施を準備中である。 研究分担者の天野が主として調査を担当している民間団体ハローライフが日本センチュリー交響楽団と連携しておこなっている若者支援事業の「The Work」が若者支援として性格よりも、市民向け音楽活動に重点を移す面を強める等、当科研が想定したこととは異なる方向の変化や新しい展開を見せているが、サポステとの比較でハローライフの若者支援活動にどのような独自性や共通性があるのか、その効果も含めて検討している作業中である。 不登校状態にある若者に独自の教育を提供している「学びの森」の活動は直接的な就労支援ではないが、参加している若者の声や「学びの森」の教育者等との意見交換から、不登校状態にある若者への教育活動と就労していない若者への支援には共通する面があり、当科研の目標である若者のアクティブ・インクルージョンのあり方を明らかにするうえで有益な知見を得ることができているように思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
この夏までに全国サポステ・アンケート調査の原案を作成して、いくつかのサポステでプレ・テストを実施したい。プレ・テストの候補としては、以前の科研(「能動的参加」としてのアクティブ・インクルージョン)で調査した近畿地方のサポステを想定している。その後、秋以降、今年度中に全国サポステのアンケート調査を実施したい。来年度以降はこのアンケート調査を精査したうえで、以前に調査した大阪府、大阪市、枚方市、京都市、神戸市等のサポステを再調査する予定。これら以外のサポステも調査することを検討中。 以前から調査している若者支援の民間団体であるハローライフの若者支援活動である「The Work」は市民に向けた音楽活動へと、若干、活動当初と性質が変化してきている。このような変化も含めて、「The Work」の若者支援活動の特色と効果を検証したい。また今後は「The Work」以外のハローライフの様々な若者支援事業も調査・検討したい。 同様に以前から調査している「不登校」状態の若者への教育の提供に取り組んでいる「学びの森」の活動、「The Work」等のハローライフの若者支援活動、全国のサポステ調査と各地のサポステの若者の支援事業を比較して、それぞれの若者支援事業の独自性と、共通して認められる若者への社会的包摂の特徴を明らかにして、当科研のテーマで若者のアクティブ・インクルージョンや「承認」の社会的包摂のあり方や課題を明らかにしたい。 上記の視点から若者支援に取り組んでいるEPIC等の英国の社会的企業の活動や、都市部貧困地区で10代の青少年の政治・社会への参加を促す「若者市長」、「若者市議会」の調査も行い、サポステその他の日本の若者支援活動との比較を行い、若者のアクティブ・インクルージョンの可能性と課題を明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
予定していた全国のサポステ調査の調査項目や調査アンケートの作成が遅れているため。調査項目や調査アンケートの文章を慎重に検討する必要があるので、この作業は急がず、先行研究の検討も含めて、時間をかけて慎重に作業を進めている。予定では今年度の5月か6月頃までにアンケートを作成。夏前後の時期に関西地域の若干のサポステに予備的調査を行い、今年度中に全国サポステ調査を実施。来年度にこの調査を基に、何か所かのサポステにインタビュー等の調査を行い、これらの調査結果を検討して、学会報告や論文の作成等の研究成果に結び付けたい。 諸般の事情で英国等の海外調査も実施できていないが、今年度は全国サポステのアンケート調査の実施に全力を注ぎたいので、来年度に英国等の海外調査を実施する予定。
|