2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02134
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大村 和正 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (30571393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
居神 浩 神戸国際大学, 経済学部, 教授 (70289057)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アクティブ・インクルージョン / 新しい社会的包摂 / 若者の就労支援 / 能動的な参加 / 当事者の変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は社会政策学会関西部会第87回大会(会場:大阪経済大学大隅キャンパス・zoom併用型)の自由論題部会で大村が報告(「新しい若者の社会的包摂―中小企業におけるアクティブ・インクルージョン」)を行った。この科研でこれまでに実施した地域若者サポートステーションの調査などに関しては、2020年12月12日の社会政策学会関西部会(オンライン)共通論題報告などで研究成果の中間報告(天野敏昭「地域若者サポートステーションの多様な支援と事業展開のアポリアー職場・就労体験における他機関との連携の現状と意義」、大村和正「若者のアクティブ・インクルージョンの可能性と課題―社会的包摂政策や研究の動向とサポステ」)を行い、本科研の目的であるアクティブ・インクルージョン概念を整理して、この観点からサポステ調査の成果をまとめた。その後、これまで若者就労支援機関への調査に加え、就労もしくは就労支援として、就労困難な若者を受け入れている事業所・企業の実態を明らかにするため、2021年度は京都中小企業家同友会のソーシャル・インクルージョン委員会を、2022年度は大阪府や兵庫県の中小企業家同友会を調査した。 これら一連の調査や学会報告を通じて、就労促進を強制する要素が強いワークフェア型と異なるアクティブ・インクルージョンの概念を明らかにして、若者就労支援機関であるサポステやその連携機関、就労もしくは就労訓練の受け入れ先の中小企業(京都府、大阪府、兵庫県の中小企業家同友会のソーシャル・インクルージョン委員会や障害者部会の参加企業)の取り組みに、アクティブ・インクルージョン的な社会的包摂の取組みが認められることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019-2022年度の期間中、研究会等でワークフェアやアクティベーション等の先行研究との関連も検討して、アクティブ・インクルージョンの概念を考察した。その成果を『大和大学研究紀要(政治経済学部編)』2019年3月刊に投稿した。アクティブ・インクルージョンの観点から就労困難な若者や若者就労支援現場における実態を明らかにするため、京都府、大阪府、兵庫県の若者地域サポートステーション(以下、サポステ)、ハローライフやミライエ等の民間団体の調査、2回の全国サポステ・アンケート調査、不登校の若者の教育に取り組むフリースクール「学びの森」の研究会やシンポジウム等への参加を行ってきた。これらの調査で若者への支援現場の実態から、当事者の自主性を尊重して、当事者の自己変容を促すような社会的包摂のあり方やその阻害要因となる課題がある程度明らかになった。これらの調査に関して、2回の社会政策学会関西部会の報告で成果の一部を公開した。 その後、アクティブ・インクルージョンの概念を明らかにするためには、若者就労支援現場だけではなく、就労困難な若者の就労体験もしくは就労で受けいれている事業所や地域を調査する必要性を感じるにいたった。このような問題意識から、2021年度に京都中小企業家同友会のソーシャル・インクルージョン部会を、2022年度に大阪府中小企業家同友会、兵庫県中小企業家同友会の調査を行い、その成果を2022年11月の社会政策学会関西部会で報告した。 コロナ禍や調査先の事情等で、想定していた調査が実施できないケースも生じている。しかし、これまでに行ってきた調査でも、当科研の目標であるアクティブ・インクルージョン概念の観点から、若者就労支援現場における、その可能性と課題をある程度は明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
この間、コロナ禍や調査先の事情等で、予定していた調査を十分行えないことがあった。2023年度、可能な範囲内で引き続き、これらの調査を続ける予定である。東京都等、関西以外の地域若者サポートステーション(以下、サポステ)や関西以外の中小企業家同友会、就労困難な若者の就労を受け入れている明石市等のマクドナルド等の調査が可能であれば、行いたい。 2022年11月の社会政策学会関西部会での報告の際、会場からの質問で、若者就労支援の民間団体を支援している東京ソーシャルファームをどう評価するかと質問された。本科研の研究課題と関連している事例であるように思われるので、2023年度の7月前頃までに東京ソーシャルファームを実施している「公益財団法人東京しごと財団 ソーシャルファーム支援センター」をオンラインで調査する予定である。 しかし最終年度の2023年度は、新しく調査等を実施すること以上に、これまでの成果をまとめて、学会報告や論文作成する作業に重点を置きたい。学会報告や論文作成の過程で必要に応じて、これらの準備作業として研究会の実施や追加の調査(これまでのサポステや若者支援の民間団体、中小企業家同友会等の深堀再調査を含む)を行うことを予定している。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍や調査先の事情で調査の日程が調整できなかった等の理由により、当初、予定していた全ての調査を行うことができなかったため、予定していた経費を全て執行することが困難になった。 執行されず、残っている経費残額に関しては、追加で行う調査や再調査に関する費用(交通費など)や、学会報告や論文作成で必要になると思われる、書籍費、コピー代金、文房具、学会報告の場合の交通費や学会参加費、対面で行われる研究会の交通費などで使用する予定である。
|