2018 Fiscal Year Research-status Report
持続可能なフードバンク活動の推進と生活困窮者支援との接合に関する研究
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18K02143
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
日詰 一幸 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30241152)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フードバンク / フードパントリー / 持続可能性 / 生活困窮者支援 / 行政 / 企業 / 協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本におけるフードバンクの先駆けは、平成12年より東京で始められた「炊き出しのための連帯活動」であったが、その後、「食に事欠く」生活困窮者の顕在化と共に、これらの日常生活圏における貧困問題解決に乗り出すフードバンクが増加した。特に、その数は平成23年の東日本大震災をきっかけに、被災地支援を目的とするフードバンク団体が増加し、さらに平成27年から施行された生活困窮者支援法もフードバンクの増加に拍車をかけている。そして、近年は生活困窮者世帯の居場所としての役割も発揮しつつある「子ども食堂」との連携でフードバンクが注目されている。一方、食品ロスの問題も社会的に注目されており、国会においても「食品ロス防止対策」に関わっての検討が進行している。 このように、日本のフードバンクの社会的な役割に注目が置かれるようになったが、多くのフードバンクは規模が小さく、運営に困難を抱えているケースも散在している。そこで、平成30年度の研究では、フードバンク運営の持続可能性という観点から、以下の調査・研究を進めた。 第一は、日本におけるフードバンクと行政、企業との協働に実態を調査した。今年は日本の主なフードバンク団体の協働関係の予備的取り組みとして、群馬県前橋市とNPO法人三松会の連携について現地調査を行い、行政との連携による運営面での持続可能性の条件を見出した。また、石川県におけるフードバンクの実態を調査した。第二は、フードバンク活動の老舗ともいえるアメリカ・シカゴのフードパントリーを訪問し、現地のスタッフからヒアリグを行った。その結果、運営上の持続可能性の条件として、ボランティアスタッフの調達や寄付金の調達が極めて重要な要因であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在学部長職を務めており、その公務に割かなければならない時間が予想以上に大きかったことが起因して、初年度予定していた日本のフードバンク団体へのアンケートならびにヒアリング調査が十分に遂行できず、全数調査ではなく、予めピックアップした主な団体への調査に切り替え、令和元年度に実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、日本におけるフードバンク団体の持続可能性について、日本のフードバンク団体70団体の中から、運営が安定している団体と運営が不安定な団体をそれぞれ10団体ほど抽出し、それら団体に対してアンケート調査を実施する。そして、主な団体に対してヒアリングを実施し、日本のフードバンク団体の運営上の問題点とその克服策を検討する。第二に、日本における生活困窮者支援とフードバンクとの効果的な接合に関する検討を行う。生活困窮者支援に関しては、フードバンクが副次的に関わるケースが多いと考えられるが、そのような中にあっても、フードバンクが主体的に生活困窮者支援に関与する場合があり、そのようなケースにおけるフードバンクの実態を調べ、今後の生活困窮者支援に果たすフードバンクの役割について考察する。第三に、海外におけるフードバンクの実態等について、主に文献調査を進める。
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Causes of Carryover |
平成30年度調査においては、日本のフードバンクの持続可能性について悉皆でのアンケート調査を検討していたが、日本には大小様々なフードバンクが存在し、小規模のフードバンクは、どの団体もほぼ同様な状況であることが判明した。そのことにより、アンケート調査を悉皆ではなく、運営が安定している団体とそうでない団体をそれぞれ10団体程度抽出し、令和元年にその調査を行うことに変更した。そのため、「次年度使用額」が生じた。
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