2019 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉実践の人間観:ガントレット恒子における「社会の公民」の論理
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18K02148
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90390145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会福祉 / 近代的個人 / 人間観 / ガントレット恒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
「自立支援」「自己決定」など、現代の社会福祉援助では、「近代的個人」としての人間観が前提となっている。本研究は、そのような「近代的個人」としての自覚を、人々がいつ、どのようにして持つようになったのかを考察することを通して、日本社会が社会福祉を発展させるための基礎として求めた論理や価値を、先駆者らの実践と思想から明らかにしようとするものである。 2019年度は、最近の社会福祉専門職養成において流通する社会福祉の基盤的価値について考察した。具体的に検証するため、福岡教育大学における2001-17年度の社会福祉士養成課程「実習報告書」(計862件)を分析した。その結果、「利用者本位」「個別性」「利用者の尊厳」「QOL」「ストレングス」「自己決定」「自立支援」「信頼関係」「連携」等の概念が多用されていることが分かった。養成カリキュラムの改正を下敷きとしつつ、近年の社会福祉専門職養成において語られているのは「利用者と対等な立場で支援するソーシャルワーカー像」「固有の人格と尊重されるべき人権をもった存在としての利用者観」「自立支援に重きを置く援助観」であることが示された。現代の社会福祉援助における人間観を検証する一事例になると考える。考察の一部を学会にて報告した。 一方、参加する共同研究からも多くの示唆を得た。 研究課題「ヴィクトリア朝の『堕ちた女』の研究:その実態と文学表象について」では、T.ハーディやE.ギャスケルらによって描かれる「転落」する女性の表象について議論した。後に日本でも訳出される物語が説く道徳観や救済観は、当時の知識層や指導者層に影響を与えたと思われる。 また、「福岡教育大学教育総合研究所研究プロジェクト」では、特別支援教育の現場の「チームとしての学校」に関する実態調査をとおして、社会福祉専門職と隣接領域との「連携」の現状について考察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定を変更して、最終年度の課題としていた現代のソーシャルワークが前提とする価値とは何かについての考察の一部に先に取り組んだため。また、所属先での研究プロジェクト(特別支援教育に関する共同研究)の調査、分析、論文執筆作業に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
関連文献・資料、当時刊行された雑誌記事、ガントレットらによる著述を収集および通読する作業を進める。また、人物史についての調査を継続する。
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Causes of Carryover |
繰越金を加算および他の研究課題への参加等の事情から、物品費、旅費ともに支出が当初予算より少なくなったため。
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