2021 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉実践の人間観:ガントレット恒子における「社会の公民」の論理
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18K02148
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90390145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会福祉 / 近代的個人 / 人間観 / ガントレット恒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
「自立支援」「自己決定」など、現代の社会福祉援助では、「近代的個人」としての人間観が前提となっている。本研究は、そのような「近代的個人」としての自覚を、人々がいつ、どのようにして持つようになったのかを考察することを通して、日本社会が社会福祉を発展させるための基礎として求めた論理や価値を、先駆者らの実践と思想から明らかにしようとするものである。 2021年度は、これまでに得られた文献・資料、当時刊行された雑誌記事、ガントレットらによる著述等を精読することに時間を費やした。 その一方で、参加する共同研究から多くの学びを得た。 研究課題「ヴィクトリア朝の『堕ちた女』の研究:その実態と文学表象について」では、分担として、「堕ちた女」のおかれた社会的背景について社会福祉史の文脈で捉えることを試みた。これまでに収集した文献(絵画や挿絵を含む)、現地訪問時に得られた資料をもとに、新救貧法下での下層の人々の生活実態(「最悪の」仕事、居住地域、衛生状況、救貧院や「ぼろ学校」での処遇など)について整理し、研究会にて報告した。本研究が扱う、同時期の日本における人々の暮らしや社会事業と対比することにもなり興味深かった。 また、「福岡教育大学教職課程の質的水準向上プロジェクト研究」では、新幼稚園教育要領が示す「人と関わる力の育ち」という概念の扱いについて分析し、国(文部科学省)が掲げる子ども観を社会福祉の立場から考察した。分野・目的の異なる研究に取り組んだことで、本研究において課題としている、現代社会が理想とする人間観についての示唆を得ることにつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルスの影響により、予定していた現地調査を延期したため。また、所属大学での教育研究プロジェクト(新たな幼稚園教諭の教職課程編成・開発推進プロジェクト)における分担作業に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、関連文献・資料、当時刊行された雑誌記事、ガントレットらによる著述を収集および通読する作業を進める。また、人物史についての調査を継続する。
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Causes of Carryover |
繰越金の加算、コロナウィルスの影響による学会出張の中止や現地調査の延期、および他の研究課題への参加等の事情から、物品費、旅費ともに支出が当初予算よりも少なくなったため。
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