2019 Fiscal Year Research-status Report
被疑・被告にある認知症高齢者・障害者へのソーシャルワークによる支援
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18K02149
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
田中 尚 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10305279)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 触法障害者 / 触法高齢者 / 入口支援 / 生活支援 / 社会内処遇 / 権利擁護 / 地域共生 / 司法と福祉の連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、宮城県内での司法と福祉の連携を目的としたチーム仙台での学習会等の活動を通して、研究テーマに関連する情報収集とグループ・インタビュー調査を実施した。学習会では、事例検討を中心に公判前・後における福祉支援・サービスへの接続や公判に向けての支援の方策などについて検討を行った。それらを通して、弁護士の支援活動の広範性と、それらを補完する福祉支援の機能について明確にすることができた。 また、グループインタビューでは、フォーカスグループ・インタビューによる方法を用いて、罪を犯した障害者・高齢者の入口支援とそれに伴う地域の連携・協働のあり方について4回の調査を行った。グループとして、弁護士グループ、相談支援専門員グループ、コミュニティソーシャルワーカーグループ、そして、各専門職の合同グループの4グループを編成し、各1回のインタビュー調査を行った。インタビューのテーマは、それぞれの立場での罪を犯した障害者への支援の実際と課題、そのうえで他職種・他機関との協働における課題とした。それぞれの立場から協働の必要性、意義、動機などの共通点がありながらも、司法と福祉の目的や視点の違いなどから生じる課題を具体的な実践の中で補完していく方策を構築していく方向性を見出すことができた。さらに、それらのインタビューでの発言内容を逐語録化し、さらに発語からの主要なキーワードの収集とキーワード間の意味に関連性、研究課題に沿った課題の抽出と概念化を行っていくための基礎的データ化を行うことができた。なお、フォーカスグループ・インタビューの実施に際しては、東北福祉大学研究倫理委員会の承認を得たうえで、すべての調査協力者からの研究協力の同意を得て実施した。 さらに、チーム仙台での学習会において、フォーカスグループ・インタビューの中間報告を行うともに、次年度の研究計画についての説明、依頼等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、触法障害者・高齢者の地域生活支援にかかわるソーシャルワーク支援のモデルを構築することを目的としており、特に、被疑者・被告人段階での入口支援に焦点を当て、司法と福祉の連携をめぐるソーシャルワーク支援をテーマにしている。昨年度はパイロット調査として、司法、福祉関係機関への量的調査(アンケート調査)を行い、連携・協働に際しての課題を概括的に把握した。 そして、今年度は直接的な支援を行っている弁護士、相談支援専門員等へのフォーカスグループ・インタビュー調査等による質的調査を行い、司法と福祉の連携・協働を関する課題分析の基礎的データを得ることができた。そのうえで、今後の司法と福祉の連携・協働のための支援モデルを仮説的に構築し、これまでの司法ソーシャルワークの機能、役割の分析と合わせて、新たな司法ソーシャルワークの実践モデルの提起を試みる予定である。また、本研究では、触法障害者・高齢者の支援を東北圏域全体の課題を踏まえることとしており、それらについては来年度の研究計画の中で対応していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は研究計画の3年目(最終年)にあたり、これまでの調査研究でのデータを基に、研究課題全体のまとめを行う予定である。具体的には、研究協力者と協働しながら、これまでの先行研究および文献調査、アンケート調査及びインタビュー調査の結果をまとめると同時に、東北六県の再犯防止計画とその取り組み(方策・施策)の分析を行うなど、東北圏域における司法と福祉の連携に関する課題の整理・分析を含め、研究課題全体のまとめと報告書の作成を行う。また、それらの作業、取り組みを行いながら、さらなる研究課題を抽出、整理し、今後の研究計画に反映させる。
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Causes of Carryover |
これまで(研究1年目・2年目)に実施した調査研究にかかわる経費において余剰が生じ、そのような状況を踏まえたうえで、3年目の調査研究の内容に一部変更を行い実施することとする。
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