2021 Fiscal Year Research-status Report
Restoration of Deviant Acts by the Youth with Different Cultural Backgraound, and Construction of Multicultural Society Matched with Japanese Conditions
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18K02171
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
小長井 賀與 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (50440194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 明 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (20584238)
川邉 譲 駿河台大学, 心理学部, 教授 (90544940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生 / 異文化背景 / 若年犯罪者 / 社会統合 / 発達課題 / 来日年齢 / 計画性 / 関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、異文化背景をもつ犯罪者の特徴と犯罪の規定要因の探究を目的としたアンケート調査を完了した。分析の結果、次のことを検証した。 1. 犯罪群の特徴:日本人の若年犯罪者と同様に、生育環境の不安定さに起因する発達上の課題をひきずり、それが犯罪性の基盤を形成している。加えて、一般の定住外国人と対比すると、以下の特徴をもつ;来日時の年齢が若く、日本の小・中学校へ通った者が多く、友人も多い。一方で、両親、特に父親との情緒的な絆が弱く、困窮時に相談できる相手が少ない。また、尊敬できる者がいるが、社会的な場での知己でない。犯行時点で有職者が少ない。さらに、社会的支援について、物質的な支援の必要性への認識が希薄で、差別への対処等精神面での支援を指摘する傾向がある。 2. 犯罪群を規定する要因:最も説明力があるのは「来日時年齢」である。それが基礎学力や思考力の基礎となる「学習言語」の習得の困難をもたらしている可能性があるが、犯罪群は相対的に年齢が低いので、明確な解釈はできない。結局、「相談相手無し」が重要な変数である。また、個人の心理特性のうち、最も説明力を持つのは「計画性の欠如」である。 3. 犯罪群の特徴を示す因果モデル:友人の多さは、困窮時に頼れる関係性に繋がず、むしろ「反社会性への親和」を助長し、さらに、それが「問題対処方略(計画性、責任帰属意識、問題解決方法)」の脆弱さを規定している。 以上の検証結果から、異文化背景をもつ若年犯罪者の日本社会への適応を促進するには、問題解決技能や社会資源に関する知識の習得、建設的な方法で生活上の課題に対処するための社会的モデルの獲得が要件であることが導ける。なお、先行研究の成果を踏まえると、計画性の欠如には日本社会でのキャリア形成の困難が影響している可能性があり、異文化背景を持つ者を包摂する社会的仕組みが彼らの社会統合の要件といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度には異文化背景をもつ犯罪者の量的調査の設計を行い、ドイツとイギリスに渡航し、刑事司法領域における多文化共生施策を視察した。 2019年度には法務省保護局と矯正局の支援を得て、異文化背景をもつ保護観察対象者と少年院在院者の計135名余にアンケート調査を実施した。なお、少年院での調査は本研究メンバーによる訪問面接調査であったので回答を詳しく掘り下げることができ、彼らの人格特性について質的な探求もできた。しかし、2019年度末から世界規模でコロナ禍が発生したために、対象群である一般の定住外国人へのアンケート調査の実施や国内外の外国人集住都市への視察が頓挫した。 2020年度から2021年度にかけて、定住外国人支援のNPOや専門の調査会社を介して一般の定住外国人へのアンケート調査を完了し、2021年度には犯罪群131名、対象群135名の有効回答のデータを解析した。 また、2018年度以降の4年間に川口市・長野市・上田市・松本市の多文化共生推進組織を訪問して、施策の概要についての聞き取り調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、これまで積み残していた国内の外国人集住都市を視察して、多文化共生施策の現状と課題を探り、日本に適合する多文化社会を構築する可能性について考察し、ここまでの量的調査や聞き取り調査の成果も併せて、本研究の成果をまとめていきたい。 なお、当初に計画していた外国の多文化共生政策・施策に関する視察は、コロナ禍のために頓挫した。もはや本研究の中で実施することは不可能であるが、本研究の発展編として2022年度から3年間の基盤研究(c)「異文化背景をもつ若者の犯罪リスク要因とそれを踏まえた総合的対応策の検討」を実施することになっているので、新たな科研費研究の中で本研究で積み残した海外視察を行い、最終的には、二つの科研費研究の成果を総合して、日本に相応しい多文化共生のあり方を探求していく所存である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のための予定していた国内外の視察旅行の多くを実施できず、旅費の執行が大幅に減少したために、次年度使用額が生じた。2022年度には、予算の残額を有効活用して、国内の外国人集住都市を視察する予定である。
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[Book] 更生保護事典2021
Author(s)
日本更生保護学会編
Total Pages
304
Publisher
誠文堂
ISBN
978-4-7923-5341-4
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