2018 Fiscal Year Research-status Report
障害年金における精神障害者の日常生活・就労・社会的支援の三者関係
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18K02173
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
青木 聖久 日本福祉大学, 福祉経営学部, 教授 (10388788)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 日常生活評価 / 生きづらさ / 就労 / 精神保健福祉士 / 障害年金 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害者に対する障害年金については、日常生活評価によって診査するということが、厚生労働省からの通知等によっても明らかになっている。しかしながら、診断書を作成する医師(以下、作成医)が評価をする段階になると、就労状況や、診察場面におけるコミュニケーション力によることが少なくない。その結果、診断書に、精神障害者の日常生活場面での生きづらさが反映されないと、障害年金が不支給や支給停止になってしまいかねない。なぜなら、現状の診査は、作成医による診断書による書面診査によるからである。このようなことから、今年度は、精神障害者の生きづらさを、いかにして、可視化して作成医に伝えることができるのか、ということに取り組んだ。 そのため、生きづらさをもつ精神障害者複数名にインタビューを実施した。また、これらの生きづらさを本人以上に客観的に捉えているのが家族ともいえる。そのことから、家族についても複数名にインタビューを実施した。これらの精神障害者に対するインタビュー、家族に対するインタビューについて、前者を「日本精神保健福祉学会」、後者を「日本社会福祉学会」で発表している。なお、学会発表では、生きづらさについて、前述の通知等から、障害認定の論点を抽出し、その論点に基づいて生きづらさの内容を分析し、考察をした。そして、「日本精神保健福祉学会」で発表したものについては、論文投稿をしている。 一方で、これらの現状に対する実践的な取組として、精神保健福祉士(以下、PSW)の果たすべき機能と役割に注目した。そこで、兵庫県精神保健福祉士協会、長野県精神保健福祉士協会において、アンケートを実施している。さらに、後に研究会議を開き、得られた内容を研究協力者と共に検討した。そして、得られた成果については、次年度に「日本精神保健福祉士学会」で発表すべく、申し込みをしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の根幹ともいえる、障害年金の認定診査の評価の論点の分析について、まとめ、2つの学会において、学会発表ができた。加えて、投稿段階であるが、論文投稿もできている。また、実践的な取組として、精神保健福祉士の都道府県レベルの職能団体において、研修会を開催し、アンケート調査を実施することもできている。 以上のことから、現時点では順調に研究活動が進んでいると捉えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に精神障害のある人の家族から得たインタビュー結果をもとにして、分析及び考察をして、論文投稿する。一方で、既に投稿中である、精神障害者に対するインタビュー結果等もふまえ、2019年度には、精神障害のある本人や家族の研究協力者と共に、研究会議をして、考察を深める。一方、障害年金に数多く携わっている社会保険労務士や精神保健福祉士等とも、研究会議を重ね、精神障害者の生きづらさの伝え方の方途を追求する。 また、2019年度は社会的支援のひとつとして、重要な位置づけになっている「医療費助成」の実態について調査を実施する。加えて、2020年度の作成医へのインタビューの実施に向け、インタビュー項目の内容、分析の仕方等について、精神保健福祉士や社会保険労務士と研究会議を開催すると共に、日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査へ倫理申請をする。 そして、2020年度以降に、作成医へのインタビューを実施する。それらを通して、就労と社会的支援等の関係等に迫るものである。
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Causes of Carryover |
ヒアリング調査等を2018年度に早めに実施することができた。そのことから、2018年度は20万円を前倒し請求をして研究協力者を2名から4名に増やした。それが、結果として、4,556円残ることとなった。 このことをふまえ、2019年度は、前年度の調査を下地として、精神障害者が生きづらさを抱えながらも、いかなる社会的支援が整うことによって、就労や日常生活が成り立つかについて論究する。一方で、社会的支援の代表的な位置にある医療費助成の実態について調査分析をする。
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