2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on effective support method for recovery from delinquency
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18K02174
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
湯原 悦子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60387743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非行少年 / 保護者 / 支援 / 立ち直り |
Outline of Annual Research Achievements |
再非行経験のある少年とその保護者を対象に、再非行から更生に至るプロセスにおいて、少年と保護者それぞれに必要な支援内容と介入のタイミングについて確認することを目的に、質的調査を行った。対象は再非行防止をミッションに掲げるNPO団体Aが支援する少年とその保護者1組である。 それぞれに個別インタビューを行い、結果は逐語録に起こし、直面した困難や悩みを抽出し、再非行をしていた時期、逮捕から少年院在院期、社会での生活を始めた時期など、時期区分ごとに整理を行った。 <結果>少年:元暴走族メンバー。集団暴走等で逮捕、2回の少年院経験がある。1回目の出院後、幼馴染で真面目な友達と遊んでいたが物足りなくなり、不良仲間と絡み始め「ここが俺の居場所だ」と思うようになった。暴走族や暴力団の世界に惹かれ、裏社会でトップを目指すことに魅力を感じるようになった。保護者:1回目の少年院ではたくましくなったと感じ、安心していた。しかし退院後、アルバイトできるところがなく、しばらく家にいた。しだいに夜遊びを始め、朝帰って来るようになったが自分は家から出て行ってしまうことを心配し、何も言わなかった。ここで何か言ったら状況はもっと悪くなるし、関係が悪くなるのを避けていた。でも「ご飯食べたの」という声掛けはしていた。一人でどうしようと悩んでストレスがたまった。 <考察>少年は出院後、居場所がなく不良仲間と過ごすようになった。出院後は就職や就学など、少年が社会で居場所を見つけるまでの集中的なサポートが不可欠である。保護者は少年院で更生したと考えるが、出院後に仕事が見つからず、夜遊びを始める息子に何と声をかけてよいのか分からず、一人で悩んでいた。この時に、少年院にいたときの姿と社会に戻ってきたときの姿にギャップが生じるのは普通であること、保護者の悩みを受け止め、どうしたらよいか共に考え、支え続ける支援が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である昨年度は、研究計画書の研究② 非行の始まりから更生に至るまでのプロセスにおける少年と保護者の心情について、調査研究を行った。少年と保護者1組に行った調査により、2回の少年院経験のある少年が1回目の入院でなぜ更生できなかったのか、出院から再非行に至るまでに少年の身に何が起こったのかを確認することができた。また、同時期に保護者である母親が退院後に生活が乱れ始めた息子にどう関わったのか、何を悩んでいたのかについてリアルに聞き取ることができた。そして、出院後にこそ、少年には彼を人間関係に考慮した集中的な支援が必要であること、保護者には少年院退院後、少年の生活をどのように見守っていけばよいのかに対する助言が必要なことを明らかにすることができた。 この研究②においては研究協力者を見つけることが難しく、現段階において、当初予定していた調査者数を確保するのが困難であることが想定される。そのため、調査を行ったのは1組ではあるが、結果は興味深いものであるため、今後はインタビュー内容を丁寧に分析し、研究成果は研究ノートあるいは紀要にまとめて世に出していきたいと考えている。 なお、本研究全体について言えば、他の研究にない独自性として「非行や犯罪をした人の「その後」について、心理的な変化までも含めた研究を行う」ことを挙げており、現段階において分析に必要なデータはほぼ収集できつつある。今年度は研究①「一定期間経過後の再非行の有無、少年を取り巻く環境の変化」について研究を進め、少年院を退院した少年が時間の経過に伴いどのように変化していくのか、少年を取り巻く環境が少年にどのような変化を及ぼすのかの2点について、中間報告として日本社会福祉学会において発表を行う。その後、立ち直りに寄与する要因・阻害する要因と再非行に至った少年と至らなかった少年との違いについて考察し、論文に仕上げていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は昨年行った研究②の成果を論文にまとめ、研究①を進展させる年度とする。研究①で得られた成果については日本司法福祉学会(国内学会)での発表、研究②の論文投稿は日本福祉大学社会福祉学部の紀要を考えている。
研究①について、必要なデータはほぼ収集済みであるが、細やかな倫理的配慮が求められるデータであるため、分析にあたっては協力団体であるNPO法人再非行防止サポートセンター愛知の理事長らと連絡を取り、研究を進めていく予定である。また発表にあたっても、事前に原稿を読んでもらい、お互いの理解に齟齬がないよう配慮していく。
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Causes of Carryover |
研究成果を報告する学会が地元で開催されたため、旅費・交通費がほとんどかからなかった。また、研究②で予定していたインタビューの謝礼が予定よりも少なくなったため、その分の予算が残った。 今年度は残った予算を文献を購入する費用にあてていきたい。また、量的分析においては自らの研究力量を高めるべく、手法に関するセミナーの受講を検討したい。
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Research Products
(1 results)