2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on effective support method for recovery from delinquency
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18K02174
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
湯原 悦子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60387743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再非行 / 少年院 / 立ち直り / 離脱 |
Outline of Annual Research Achievements |
(背景)2014年に少年院を出院した者の再入院率及び再入院・刑事施設入所率は、2年以内では11.4%,5年以内では22.2%であった。再非行の結果、身柄拘束されると生活の質は著しく下がる。少年院で過ごした経験を持つ少年たちはそのことをよく分かっているはずなのに、なぜ、また非行をしてしまうのだろうか。その点を明らかにするには、出院後、いったい少年に何が起きたのかを調べる必要がある。 (目的)少年院から出院して間もない少年21名を対象に、彼らが出院後、どのような問題に直面しどう対処したのか、また、再非行に至った事例にはどのような背景があり、いかなる経過をたどったのかについて市民団体Aが作成した支援記録を用いてretrospectiveな質的分析を行った。 (結果)出院した少年たちが直面した問題について、友人がいなくて寂しい、話をする相手がいない、いらいらして親と喧嘩し家での居場所を無くす、精神的に不安定になる、自暴自棄になる、細かなトラブルに巻き込まれるなどの問題に直面していた。具体的な内容としては、次の8つ ①生活場所、②人間関係(家族、非行仲間、先輩、彼女)、③金銭トラブル、④金銭管理、⑤健康状態、⑥飲酒問題、⑦仕事、⑧学業 が確認できた。 (考察)少年院を出た後、少年たちは様々な困難に遭遇し、大半は克服されることなく蓄積していく。半面、再非行に至った少年たちは「うまくいかない」との焦りから自暴自棄になり、適切な解決策を見いだせないまま再非行に及んでいた。退院後6カ月が経過しても再犯を防ぐという点からは気の抜けない状況が続いていることが確認できた。支援者は家族との関係悪化をどう食い止めるか、先輩からの呼び出しにどう対応すればよいか、悩んだり困ったりした時どのように振る舞えばよいかなどについて、こまめに相談に乗り、少年が自暴自棄にならないよう働きかけることが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目である昨年度は、研究計画①一定期間経過後の再非行の有無、少年を取り巻く環境の変化 について取り組んだ。市民団体Aが作成した支援記録を用いてretrospectiveな質的分析を行ったため、支援記録に不備があったり、内容上、固有名詞を除いても個人が特定されかねない事件、数の少ない女子の事件などを除いた結果、21名の少年の分析となり、当初予定していた50~70名には至らなかったが、設定した条件のもと、可能な限りでの分析は行うことができた。この研究結果については昨年8月に行われた司法福祉学会で口頭発表を行い、多くの学会員からの関心と研究へのアドバイスを得ることができた。また、現在は論文化に着手しており、おおむね執筆も終わっている。今年度中に、日本社会福祉学会あるいは日本司法福祉学会に論文投稿を行い、掲載をめざす予定である。 なお、この研究に加え、現在は立ち直りに向け、元非行少年が自らの回復のストーリーを他者に語る意義に着目して研究を行っている。非行や犯罪から離脱した者が自らの回復のストーリーを語る『回復の儀式』は彼らの社会復帰において重要とされているが、自らのストーリーを語ることが実は少年の自己満足にしか過ぎず、少年の社会復帰や社会的包摂につながっていないとすれば、それはかえって更生を阻害するものになりかねない。今後の非行からの離脱に向けた支援を効果的に行うために、ストーリーの聴き手は少年の話をどのように受け止めているのか、少年を受け入れていく方向で意識変化が生じているのかなどについて分析を進めている。この研究についても、昨年の日本社会福祉学会で口頭発表を行い、同じ領域で研究する方々から多くの示唆を得ることはできた。2020年度内に学会誌への論文投稿をめざしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はこれまで行った研究の成果を論文にまとめる年度とする。研究①で得られた成果については日本司法福祉学会あるいは日本社会福祉学会の学会誌、研究②でえられた成果は日本福祉大学社会福祉学部の紀要を考えている。
本来であれば、今年度は研究のまとめとして、成果を司法福祉に関する海外の学会での報告を考えていた。しかし新型コロナの影響で海外の渡航が極めて難しくなり、現時点において学会大会の延期または中止が相次いでいる。そのため、今年度は残念であるが、海外での研究報告を行わず、国内での論文発表に集中化することにしたい。
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Causes of Carryover |
研究成果を報告する学会が台風の影響で1日に短縮されたため、宿泊費がかからなかった。また、研究①で予定していた質的調査の謝礼が先方の意向でかからなかったため、その分の予算が残った。 今年度は残った予算を文献を購入する費用にあてる、量的分析において自らの研究力量を高めるべく、手法に関するセミナーの受講をするなどを考えている。
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Research Products
(2 results)