2018 Fiscal Year Research-status Report
障害者雇用の促進に関する公共調達・入札制度の国際比較研究
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18K02179
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岸 道雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (20330011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公共調達 / 障害者 / 優先調達 / 総合評価一般競争入札 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、文献・資料調査をベースとして、欧米諸国における公共調達を通じた障害者雇用の制度と事例および、日本の大阪府、大阪府内の複数の自治体における総合評価一般競争入札方式を用いた障害者雇用の取り組みの実態と課題について研究を行った。 公共調達を通じて社会的価値の実現を目指すこと、特に障害者雇用の推進を行うことは、米国において一定の歴史がある。1938年にワグナー・オデイ法(Wagner-O'Day Act)が制定され、全ての連邦政府機関が、視覚障害者が働く非営利作業所の製品であるモップやほうきなどを購入することとした。その後この法律は改正され重度障害者にも適用拡大され、さらに2006年にAbilityOneプログラムに名称変更されて、購入対象物品・サービスも多様化され、現在に至っている。 欧州においては、2004年および2014年のEU公共調達指令に基づき、環境、社会といった価格以外の要素を評価項目に含めることを認めているが、特に2014年EU公共調達指令において、最も経済的に有利である入札(MEAT)という落札基準の中に、Best Price-Quality Ratioを明確に認めたことの意義は大きいとみられる。 日本においては、大阪府が2003年度以降、行政の福祉化の名のもとに、総合評価一般競争入札方式を清掃業務委託に適用し、障害者等の雇用の促進を行っている。また、大阪府内の複数の市においても同様の取り組みを実施しているが、評価点や評価項目の設定については幅がある。 米国は日本の障害者優先調達法に基づく優先調達のあり方に一定の示唆を与えるものであり、2014年EU公共調達指令の内容は大阪府等の総合評価一般競争入札方式と共通する部分がある。ただし、どのような落札基準の設定によって、障害者の雇用をより促進することが可能であるかについては今後さらに研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度中に米国へ出張予定であったが、トランプ政権による政府機関の一部閉鎖の影響のため、米国出張を延期した。ただし、日本国内で実施可能な調査研究を行ったため、全体として本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、文献およびウェブサイト等の資料に基づき調査を行うことを基本としつつ、公共調達を用いた障害者雇用の促進に関する米国と欧州の先進的取り組みの実態と課題について現地ヒアリング調査を実施し、得られた調査結果について、日本を含めて比較分析を行うというものである。なお、2018年度に延期した米国への調査出張に関しては、適切な時期に実施する。
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Causes of Carryover |
2018年度中に米国出張を予定していたが、トランプ政権による連邦政府機関一部閉鎖の影響のため、米国出張を延期したことにより、次年度使用額が生じた。2019年度分の助成金と合わせ、適切な時期に米国および欧州出張を実施することと、必要な文献を購入することによって助成金を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)