2019 Fiscal Year Research-status Report
外国にルーツをもつケアワーカーの職務意識とソーシャルサポートの実態に関する研究
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18K02182
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 有希子 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (60425098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 三重 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00213900)
武田 丈 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30330393)
石川 久展 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (80222967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国人ケアワーカー / インタビュー調査 / 職務意識 / ソーシャルサポート / 組織環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年受け入れと期待が高まる外国人ケアワーカー(外国人介護士)の職務意識を明らかにし、介護職としての就労に至る来日動機やプロセス、現在の仕事内容とやりがい、現在の生活状況と課題、仕事上のニーズや課題、生活上のニーズや課題、職場におけるソーシャルサポート、生活満足感、キャリアプランと今後の就労継続意向との関連性を明らかにすることを目的としたインタビュー調査を実施した。 インタビュー調査の結果、全体的に看護大学等の専門職の大学教育を受け、社会経験を持つ比較的エリート層が海外における多様な経験やキャリアを身につけること、母国における家族の生活資金を獲得するチャンスを掴むこと等の様々な理由により来日していることが明らかになった。全体的に外国人職員の方々は、仕事と学びを両立することの難しさを感じている人が多く、特に日本語によるコミュニケーション能力は来日年数や教育機会、個人差によりその差が大きくなる。また、仕事から得られる生きがいでは、利用者との関係性や親密性をあげる人が多く、上司や同僚との関係については信頼や感謝といった言葉が多く聞かれた。今後のキャリアプランや就労継続意向については、概して長期滞在が可能になる在留資格を得ることを目標として、日本に永住することを希望する人もいるが、母国の生活や家族への想いもあり、一定期間での帰国を希望する人がやや多いことがわかった。 現在の外国人ケアワーカーの課題としては、1)在留資格、給与、家族形成、個人的事由などの要因により長期間の就労の見通しが立ちにくいこと。2)在留資格や法人施設により対応が異なるが、教育機会の十分な確保が難しいこと。3)生活支援に関わる法人の役割と影響が大きいことが明らかになった。 本研究において、現場で働く外国人ケアワーカーの職務意識を把握し、組織環境や個人状況の関連性を明らかにしていくことの意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、一年目に続いて、施設管理者と外国人ケアワーカーへの聞き取り調査を実施してきた。まず、積極的に外国人介護士を雇用するための取り組みを行う関西地方と東海地方の高齢者福祉施設管理者6法人の施設管理者や人事担当者を対象に現在の受入れ状況と外国人職員への支援体制に関するインタビュー調査を実施した。その際には、外国人職員の受け入れ状況と今後の受け入れ予定に加え、現地における求人や採用選考の方法、雇用条件や処遇状況、仕事内容、現場における同僚や利用者からの評価、チームケアを行う上での課題、資格取得状況、研修指導体制、資格取得や日本語教育の学習支援などについて、インタビュー調査を行った。施設管理者レベルのインタビュー調査を実施する中で、受入れ施設組織に対する質問紙作成を進め、改訂作業を行い、調査準備を行った。 また、関西地方と東海地方の6法人の高齢者福祉施設で働く外国人ケアワーカー(EPA介護福祉士(候補生)、技能実習生、留学生、特定技能(介護)など)への職務意識に関するインタビュー調査の準備を行い、16名のインタビュー調査を実施した。インタビュー協力者の出身国は、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ベトナムであった。インタビュー内容は、介護職としての就労に至る来日動機やプロセス、現在の仕事内容とやりがい、現在の生活状況と課題、仕事上のニーズや課題、生活上のニーズや課題、職場におけるソーシャルサポート、キャリアプランと今後の就労継続意向についてであり、インタビュー方法は日本語や英語、母語通訳者を介して対面調査により60分程度行った。インタビュー調査後には、データのトランスクリプションの作成を行い、現在研究チーム内で分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、今後は、施設管理職インタビューを通して作成を進めてきた質問紙調査を実施し、職場組織における外国人ケアワーカーの受入れ体制と環境整備、就労・教育・生活上のサポート体制について、現状と課題を把握した上で、外国人ケアワーカーの職務意識を踏まえた上での今後の課題と方向性を明らかにしていく。 研究の進捗状況において述べているように、外国人ケアワーカーの受け入れ施設管理者を対象とした質問紙調査については、1~2年目に実施したインタビュー調査をもとに質問紙の素案を作成して、パイロットスタディを行い、質問紙の改訂作業を進めてきた。 本来は、2020年3月頃の調査実施を検討していたが、コロナウィルス感染拡大予防の対応に追われる高齢者福祉施設の状況を鑑み、調査実施を8~9月に延期して実施する予定である。 質問紙調査は、全国の高齢者福祉施設より1000施設を無作為抽出して郵送法により実施する予定である。質問紙の郵送や回収、回収後のデータ入力やデータ整理においては、アルバイト学生や専門業者に依頼して年度内の終了を目指す。データ分析は2021年3月末までに調査結果を整理し、まとめていく。 本研究では、インタビュー調査と質問紙調査の実施によるミックス法を用いた調査を行うことで、全国の高齢者福祉施設の外国人ケアワーカーの受け入れ状況と今後の受け入れ課題や方向性を明らかにしていくことが可能になる。外国人ケアワーカーの職務意識に関するインタビュー調査結果を踏まえて、職場組織としてのキャリアサポート体制づくりの提言へとつなげていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、以下の2点が挙げられる。①コロナ感染拡大の影響により、研究分担者が予定していたフィリピンなどにおける現地調査のための海外出張が延期されたこと。②同様の影響により、2020年3月に実施予定であった質問紙調査票の印刷と送付を次年度8~9月に延期したことである。以上の理由から、当該年度の使用額が抑制され、次年度へと持ち越しとなった。次年度においても海外への渡航が認められない場合には、①の出張は中止とする。ただし、外国人ケアワーカーの送り出し国の状況を把握するための専門知識の提供が必要と考えるため、必要に応じて関係者より情報提供を依頼することで代替することを検討している。②の質問紙調査は予定通りに実施する。
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