2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の蒸留酒製造技術の独自発展の起源を探る~中国「小曲米酒」との比較を通じて
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18K02188
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉崎 由美子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (80452936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小曲米酒 / 蒸留酒 / 麹 / 糖化 / 泡盛 / 米焼酎 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、小曲米酒の伝統的な製造方法の意義について調べた。具体的には、小曲米酒製造において特徴的な固体糖化工程の前後における菌叢および酵素活性、成分の変化を調べた。固体糖化前後において、真菌が約50倍増殖し、一方細菌はほとんど増殖していなかった。発酵に重要な酵素であるα-アミラーゼ、糖化力 およびプロテアーゼは、それぞれ22倍、53倍、5倍増加した。また糖化後にグルコース含量が著しく増加し、原料である米のデンプンの約70%がグルコースまで分解されていることが確認された。有機酸含量も増加し、特に乳酸の生成が顕著であった。以上のことから、固体糖化工程は、単に糖化だけが生じる工程ではなく、微生物の増殖とそれに伴う酵素および乳酸の生成が起こっていることが明らかになった。そこで糖化時の菌叢の変化についてDGGEおよび次世代シーケンサーを用いた解析を行った。固体糖化中に細菌類は大きな菌叢の変化はなく、またほとんど乳酸菌は検出されなかった。一方、真菌類はスターターである小曲の菌叢に対して、糖化当初は、米に付着していたと考えられる真菌の存在が認められたが、時間が経過するに連れて、菌叢はほぼスターターと同様の傾向を示した。このことから、固体糖化工程では、安定して小曲内の真菌の増殖が進行することが分かった。さらに固体糖化時の温度の影響を調べるために25~40℃の条件で固体糖化を行った。最も糖化効率が高い温度は35℃であり、真菌の増殖に適している温度は30℃~35℃であり、グルコアミラーゼの生産量は25~35℃においてほぼ一定であり、一方で、乳酸の生成量は、いずれの温度帯においても一定であり、高温の方が乳酸の生成に適していることが示唆された。以上のことから、固体糖化工程は40℃以下で管理することが重要であることが示された。また市販の小曲米酒と泡盛について成分の比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、小曲米酒の特徴的な製造方法の意義について明らかにすることができ、現在論文投稿の準備を行う状況になっている。同様に小曲米酒の特徴を明らかにするために、小曲米酒と泡盛、米焼酎の市販酒について成分の比較を行い、こちらも投稿論文の準備を行うことができている。これらの成果は、次年度の研究計画における指標となるものであり、次の研究を遂行するにあたり、明確な指針を持って実施していくことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、固体糖化工程がもつ意義について、酒質への貢献に関する内容および、台湾における米酒の製造方法について実験を実施する。具体的には、固体糖化工程の有りおよび無しの条件で、小曲米酒を製造し、本年度明らかにした特徴的成分との関係について調べていく。また最終年度に予定していた台湾における調査を2年目に行う。このことにより、早期に台湾での米酒製造と中国の小曲米酒製造、日本の泡盛(および米焼酎)製造の相違についての情報を得て、最終年度の実験計画に活かす予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究が新たな方向に進展した部分があり、追加のデータの取得を試みてきた。 これらの成果は、次年度に学会等で積極的に発表し、様々な研究者からの助言を受けて、さらに進展させていくことに使用する計画である。
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Research Products
(26 results)