2019 Fiscal Year Research-status Report
日本の蒸留酒製造技術の独自発展の起源を探る~中国「小曲米酒」との比較を通じて
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18K02188
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉崎 由美子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (80452936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小曲 / 麹 / 米酒 / 焼酎 / 蒸留酒 / 香気成分 / GC-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年(平成31年)度は、市販の小曲米酒および泡盛、米焼酎の香気成分について比較し、各酒らしさに寄与する香気成分について明らかにした。また小曲米酒の特徴的な製造工程と酒質との関係を明らかにすることを目的に、研究室にて酒を製造し、発酵および香気成分を調べた。 1つ目として、小曲米酒15品、泡盛6品、米焼酎5品を市場より購入し、化学的性質および香気成分について比較した。小曲米酒は、15品中3品において淡黄~茶褐色の色が確認された。茶褐色のサンプルはグルコース含量が高く、アミノ酸も検出された。乳酸はすべての小曲米酒サンプルにおいて検出された。34個の揮発成分について同定・定量した。小曲米酒において18成分が、泡盛において15成分、米焼酎において13成分が匂い閾値を超える濃度が含まれていた。これらの成分のうち11成分は小曲米酒に多く含まれており、主成分分析の結果から乳酸エチルが小曲米酒と泡盛、米焼酎を区別するために重要な香気成分であることを明らかにした。 2つ目として、小曲米酒の特徴的な製造工程である固体糖化工程が酒質に及ぼす影響について調べた。固体糖化あり、またはなしの条件で小曲米酒を作製し、発酵の状態および香気成分について比較した。その結果、小曲米酒の『固体糖化』工程が、特徴香気成分である乳酸エチルとβ-フェネチルアルコールの生成に重要な役割を果たしていることを明らかにし、さらに泡盛と小曲米酒の違いを生み出す要因であることを科学的に示しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、小曲米酒の特徴的な製造方法の意義、さらに上述の小曲米酒の特徴香気成分の解析においても学術論文として投稿し、受理された。またこれらの成果を活用して、固体糖化工程が酒質に及ぼす意義について研究を進め、こちらも論文投稿の準備を行うことができるところにまで来ている。また次年度は、これらを踏まえて、小曲米酒と泡盛の香気成分の違いが生まれる要因についてさらに詳細に研究を進めることができるため、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、小曲米酒における固体糖化工程と日本の泡盛における製麹の工程が酒質にそれぞれどのように影響をしているかについて実験により明らかにする。最初に小曲米酒と泡盛を実験室にて作製し、それぞれの香気成分および発酵の特性について比較する。これによって明らかになったそれぞれの鍵化合物を評価の指標とする。次に泡盛を小曲を用いて固体糖化により作製し、一方小曲米酒を製麹によって作製し、発酵および香気成分の分析を行う。これによりそれぞれの工程が鍵化合物の生成に及ぼす影響について明らかにする。また台湾における調査を行う。
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