2018 Fiscal Year Research-status Report
加熱処理による畜肉・魚肉に含有される鉄の栄養有効性および物理化学的性質の変化
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18K02196
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
吉田 宗弘 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30158472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細見 亮太 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (20620090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄 / 栄養有効性 / ヘモグロビン / 牛肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
畜肉類の多くは,摂食前に加熱を伴う加工・調理を経ることから,その過程において含有されるミネラル類の化学的な存在形態,ひいては栄養有効性が変化する可能性がある。本年度は、牛肉を加熱調理した場合に,含有される鉄の栄養有効性にどのような変化が生じるかを動物実験によって評価した。まず、タンパク質および鉄濃度がいずれも16%(w/w)、20 μg/gである3種の飼料(カゼイン飼料,生牛肉飼料,ロースト牛肉飼料)を調製した。カゼイン飼料は,タンパク質源がミルクカゼイン,鉄源がクエン酸第二鉄であり,2種の牛肉飼料は,タンパク質源,鉄源がすべて調製した生牛肉粉末またはロースト牛肉粉末である。4週齢雄ラット18匹を6匹ずつ3群に分け,調製した3種の飼料をそれぞれに与えて4週間飼育した。ヘモグロビンと血清トランスフェリン飽和率は牛肉を与えた2群が有意に低く,肝臓と腎臓の鉄濃度もこの2群がカゼイン群よりも低値だった。そのため、牛肉中の鉄の利用性は加熱調理の有無にかかわらず対照としたクエン酸第二鉄よりも低いと考えられる。これまでにラットを使った栄養試験では,牛肉中の鉄の化学形態であるヘム鉄が無機鉄よりも栄養有効性が低いと報告されているため、これまでの報告と同様の結果であった。牛肉を与えた2群を比較すると,ヘモグロビン,血清トランスフェリン飽和率,肝臓鉄濃度において,ロースト牛肉粉末を与えた群が生肉粉末を与えた群よりも低い値を示す傾向があった。以上より,加熱調理は,牛肉中の鉄の栄養有効性を低下させる可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の実施予定であった、牛肉を加熱調理した場合に含有される鉄の栄養有効性にどのような変化が生じるかについて動物実験によって評価した。その結果、加熱処理によって鉄の栄養有効性が低下する可能性が示された。このように2018年度実施予定であった研究項目について順調にデータが得られていることから、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は加熱の有無による鉄の栄養有効性の変化を評価するため、牛肉に含まれている鉄の化学形態であるヘム鉄に焦点を絞る。凍結乾燥またはスプレードライによって調製したヘモグロビン粉末をラットに給餌し、鉄栄養有効性の評価を行う。ラットが軽い貧血状態になるように、餌料中の鉄濃度は15 ppmに調製し、一定期間飼育後、血液の鉄栄養指標について評価する。また、非加熱および加熱処理した畜肉・魚肉と対照物質である硫酸鉄をラットに投与して同様の評価を行う。
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