2018 Fiscal Year Research-status Report
ストック型住宅を実質化するために必要とされる人間・環境条件の探究
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18K02202
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柳瀬 亮太 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10345754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 昌洋 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (10528756)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 既存住宅 / 外壁 / 汚れ / 長期優良住宅 / 現場実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
「良質で継続性のある住宅」を実質化し、未来の住み手に対しても魅力的であり続けるために必要な空間構成要素を探究するため、1)重要伝統的建造物群保存地区(徳島県・香川県)や台湾(日式住宅)を巡検、2)既存住宅の外観評価に影響する要素(劣化や汚れ)について長野県内を中心とする標本調査、3)実際の建物に劣化や汚れ(標本調査で抽出した要素)を再現し評価させる現場実験および実験室実験、を実施した。現場実験に際しては、長野県建築士会(飯水支部)の方々にご協力いただいた。 巡検には研究分担者と協力して臨むなどして、建物の外観を構成する要素だけでなく、内部の見学などを通じて構造的側面に関わる要素についても記録し、把握した。標本調査については、学生の協力をえて比較的多くの事例(建物の劣化や汚れ)を収集するように努めた。研究代表者とは異なる価値観や視点から多くの様々な事例を収集できた点は有意義に感じられた。現場実験は、飯山市(旧城山児童館)にて実施した。事前調査にて収集した建物の劣化や汚れを東側壁面に塗料や粘土などを用いて再現し、その壁面を実験協力者(26名)に評価(8項目6段階)させた。実験室実験は、現場実験の刺激壁面を同じ条件で撮影した画像を評価対象としてプロジェクタを用いて提示し、同様に評価させた。収集したデータは実験別に統計分析した後に比較分析した。 その結果、以下の知見がえられた。1)サビや黒カビなどの自然な変化と認識される劣化は、汚れの量に比例して各評価がネガティブに推移する。2)窓枠からの雨だれやボルトからのサビなど、要因が明確な劣化は「自然な・見慣れている」と評価される。3)ひび割れや壁面の剥離など、構造的問題を連想させる劣化は汚れに関わる評価は高まらないものの、他の評価はネガティブに推移する。4)構造的問題を連想させる劣化に汚れが組み合わさると相乗的に印象評価が大きく低下する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記述した通り、1)実質的に長期に渡って存在する既存住宅および建築に関わる知見を巡検などによって渉猟し、2)既存住宅の外観評価に影響する要素(劣化や汚れ)について長野県内を中心とする標本調査、3)実際の建物に劣化や汚れ(標本調査で抽出した要素)を再現し評価させる現場実験および実験室実験、を実施できた。 えられた成果は関連する成果報告会にて発表し、その過程で次年度の活動につながる貴重な意見を獲得できた。また、国際会議のアブスト審査を既にクリアしており、より広範な意見をえられる予定である。 以上の進捗状況をふまえて、本研究の目的を達成するにあたって「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しており、研究の推進方策に関わる大きな変更は生じない予定である。令和元年度は、平成30年度に収集した資料および実験データをふまえて、新たな調査もしくは実験を追加して実施する。具体的には、住宅外観から感じ取れる(もしくは、推測される)構造的な要素に関わる側面についてデータを抽出し、これまでに収集してきているデータと合わせて、総合的な分析・考察を行いたいと考えている。 また、地域との連携を通じて機会を得られれば、現場実験を改めて行い、再現性について検証したい。異なる外観および壁面素材でも同様な結果がえられれば、研究内容の信頼性と妥当性を高められる。 これまでのところ、進捗に特別な問題は感じられないので、以降も当初の研究計画に基づいて研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
現場実験における実験協力者が見積もりよりも少なかったこともあり、当初の予定と異なる使用額となった。令和元年度の実験(もしくは調査)では実験協力者が予定より多くなる可能性があり、研究期間全体では予定に準ずると思われる。
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